革新的アルミ・マグネ材料開発、新構造材料技術研究組合、17年度成果を報告 高強度技術など開発順調、航空機・車両材用の試作進める

 UACJや神戸製鋼など非鉄金属メーカーが多数参画し、輸送機向け軽量材料の開発を目指している新構造材料技術研究組合(ISMA)は26日、都内で17年度の成果報告会を開催し、足元の研究の進ちょく状況を説明した。

 アルミやマグネシウムの高強度材研究や低コスト化技術開発が当初計画よりも前倒しで進んでいることが明らかになった。また来年度からは、開発した製品や部材の製作・実用化だけでなく加工メーカーやエンドユーザーとの連携を強化することも示された。

 アルミ分野では、世界最高強度のアルミ材料の開発がラボレベルで17年度の目標を達成した。

 現在は航空機用部材への活用を狙った大型化技術開発と材料認定に向けた準備を進めているとした。

 航空機の構造部材に使用されるアルミ合金は、アルミにリチウムを添加したアルミリチウム(Al―Li)合金が主流となっている。しかし、この分野では欧米アルミ圧延メーカーが技術開発で先行しているため、ISMAはAl―Li合金よりも引張強度に優れ、低コストでの製造が可能な7000系アルミ合金の開発を推進。最終目標として引張強度750メガパスカル超、耐力700メガパスカル超、伸び12%以上、延性・靭性を維持しつつ、25%の強度向上と耐食性の向上を目指している。

 ISMAでは合金設計や溶解鋳造、圧延技術などさまざまな視点を融合して高強度材の開発を目指している。これまでに低温圧延技術やねじり鍛錬加工技術などの手法を用いることで、引っ張り強さや耐力の向上を実現。来年度以降は、ねじり鍛錬加工の実証化試験機を開発し、大型ビレットに対するねじり鍛錬加工の適用や疲労・耐食性評価を実施する。

 併せて航空機メーカーなどと協力して航空機部材の試作に移していく方針を示した。

 マグネシウム分野では難燃性マグネシウム合金の開発と、それを用いて世界で初めてマグネシウム製高速車両構体の実用化を目指している。今年度までにAX41など四つの合金開発が完了する見通しにあるほか、アルミ製ダブルスキン構体に比べて3割の軽量化が可能になるとの見通しも示した。

 来年度以降は5メートル長のモックアップ構体を開発し、実車を想定した品質疲労試験の実施を計画する。さらにこの研究成果を自動車材料に展開し、量産による低コスト効果の実現を目指すことも決まった。

 また、当初スケジュールよりも2年前倒しで研究が進ちょくしていることが明らかとなった。

© 株式会社鉄鋼新聞社