被爆体験者の訴え 長崎地裁が退ける 健康手帳交付認めず

 国指定地域の外で長崎原爆に遭ったため被爆者と認められていない「被爆体験者」3人が、被爆者健康手帳の交付を長崎市に求めた訴訟の判決が29日、長崎地裁であり、武田瑞佳裁判長は原告の訴えを退けた。

 訴状によると3人は、いずれも爆心地から約10キロの旧西彼深堀村(現長崎市)で被爆したと主張。被爆者援護法で「身体に原爆放射能の影響を受けるような事情の下にあった」と規定する3号被爆者に当たると訴えていた。

 判決は「具体的な被爆状況が明らかでなく、3号被爆者に当たるとは認められない」と判断。仮に原爆に遭っていたとしても、現在の科学的知見では「深堀村まで初期放射線が到達したとは考え難い」と指摘した。

 3人が手帳を取得できず苦痛を受けたとして、市などに1人当たり100万円の慰謝料を求めた訴訟の判決も同日言い渡され、武田裁判長は「(市側に)違法行為があったとは認められない」として訴えを棄却した。

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