県「Kアラート」導入へ 119番全消防と瞬時共有

 火災など災害発生時の初動対応強化に向け、県が県内の各消防本部と連携した新たな仕組みの導入を検討していることが30日、分かった。119番通報を全消防本部がリアルタイムで共有し、周辺への応援要請を省略、迅速な部隊投入で被害軽減につなげる。新潟県糸魚川市の大規模火災や相模原殺傷事件を教訓とした全国初の試みで、2018年度当初予算案に関係費を計上する。

 県が20年度の導入に向けて研究を重ねているのは、「かながわ消防初動対応力強化システム(Kアラート)」(仮称)。県内全33市町村をカバーする24消防本部が、管轄地域を越えて相互応援する「かながわ消防」の枠組みを活用した実践策に位置付ける。

 県安全防災局と各消防本部は、既存のネットワークを活用し、被災地の119番通報を地図画面で確認・共有。集約した情報を基に各消防本部に残されている部隊数などを分析し、アラートを鳴動させて出動要請につなげる。該当エリア以外でも状況を把握できるため、二次的な応援要請への準備も迅速に行えるといった効果も期待できる。

 県内の災害対応は現在、応援要請や部隊数の把握は主にファクスでやりとりしており、情報が限られる上に出動までに一定の時間を要するなどの課題がある。16年の糸魚川の大火では地元の消防本部が消火や救助活動に奔走し、速やかな応援要請や詳細な被災状況の把握が困難な状況に陥った。相模原の事件では死傷者数など事件の全容把握が難しく、近隣との情報共有がスムーズにできなかったとされる。

 県はこうした教訓を生かすとともに、より実効性のある初動対応を模索。課題の克服に向け、各消防本部との具体的な連携方法などを研究していた。18年度はシステムの設計を進め、テスト運用を経て20年東京五輪・パラリンピックまでの稼働を目指す。

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