イノシシ対策で条例案 被害拡大、農家は悲鳴

猟師は高齢化 駆除追い付かず

雪で埋まった水田を見て回る菊池裕久雄さん。イノシシが入らないよう電気柵の内側にワイヤメッシュを張り巡らす=桜川市門毛

県内のイノシシ被害を食い止めようと、条例化の動きが本格化した。生産現場では出荷直前の農作物が食われ、稲作を諦めるケースも出るなど、農家が悲鳴を上げる。イノシシの生息域(2016年度)は県内の半数を超える27市町村に拡大。捕獲数が年々増えるほか、県は自治体と協力し、防護柵設置などを後押しするが、追い付かない状況が続いている。

三方を山に囲まれた桜川市の旧岩瀬地区。1月下旬の朝、同市門毛の肥料業、菊池裕久雄さん(69)方近くの道路を歩くイノシシを菊池さんの妻が見た。

「20年ほど前から増え、耕作放棄地の拡大もあり、山裾まで下りてくるようになった。子連れでも4、5頭だったのが今はもっと多い」と菊池さん。生息地を耕作放棄地に広げながら、田畑のコメや大豆を狙ってくるという。

菊池さんは大豆や麦の転作田を含め、約5ヘクタールの水田を耕す。6年ほど前、周囲に電気柵を張り、昨年からは効果が高いとされる金属製の格子(ワイヤメッシュ)を増やした。

「電気柵は草が触れると漏電し、効果が薄くなる」として、菊池さんは周辺の草刈りなど小まめな手入れの必要性を強調する。イノシシは大豆の薄皮、コメのもみ殻など外側は吐き捨てて、中身だけを食べる。クリもスプーンですくったように食べる。「イノシシは頭がいい」と、効果的な対策を求める。

昨年夏、同地区の竹内治雄さん(72)の水田に20頭を超えるイノシシの親子が侵入した。親類がスマートフォンで撮影した動画には、次々に水田へ飛び込む姿が映っていた。

「全滅だった」と竹内さん。年齢も重なり、これを機にコンバインやもみすり機、乾燥機を売り払い、稲作の継続を諦めた。

東京電力福島第1原発事故の影響で、本県産イノシシ肉は石岡市の一部施設を除き、出荷制限が続く。県の調査で1キロ当たり100ベクレルの基準値を超えたのは、11年度に87・5%を占めたが、17年度はゼロ。放射性物質の平均値も下がり、同年度は25・8ベクレルとなった。ただ、肉の需要はもともと多くなく、大幅な出荷拡大も期待できない。

地元の猟友会はイノシシの駆除を続けるが、猟師の平均年齢は80歳を超え、高齢化が進んでいるという。

住民らがイノシシに襲われる事故も起きている。1月28日、つくば市沼田の自転車専用道つくば霞ケ浦りんりんロードで、体長1メートルほどのイノシシに襲われた男女が重軽傷を負った。

県の推計によると、県内の捕獲数を年6千頭で維持した場合、17年度末で約3万2千頭とみられる生息数は、25年度には約8万3千頭に増える。15年度の農業被害額は8800万円で前年をわずかに下回ったものの、生息数の増加予測を前に見通しは不透明だ。(黒崎哲夫)

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