日本鉄鋼業のエネルギー効率、世界最高水準を維持 15年時点の国際比較、省エネ設備、幅広く普及

 公益財団法人の地球環境産業技術研究機構(RITE)が実施した鉄鋼業のエネルギー効率に関する国際比較で、日本鉄鋼業のエネルギー効率が依然として世界最高水準にあることが分かった。省エネ設備・技術の普及率が各国に比べて高いためで、鉄鋼業の二酸化炭素(CO2)排出削減の取り組みでは、日本が導入している省エネ技術を新興国などに普及させることが大きなカギとなりそうだ。

 RITEの小田潤一郎・システム研究グループ主任研究員が2015年時点の主要鉄鋼生産国のデータを基に評価・分析した。対象としたのは高炉一貫メーカーの転炉鋼生産プロセス。小田研究員は5年前の10年時点でも同様の調査を実施しており、この間の変化についても分析した。

 15年時点のエネルギー消費原単位比較では、日本を100とすると韓国103、ドイツ109、中国116、米国130などとなっており、日本鉄鋼業が鉄鋼主要国の中で最もエネルギー効率が優れていることが改めて立証された。05年、10年時点の調査でも日本は最高効率だった。新興国などの追い上げがある中で、世界最高水準を維持し続けた形だ。

 小田主任研究員は、日本が最高水準を維持できている理由について、CDQ(コークス炉乾式消化設備)やTRT(高炉炉頂圧発電設備)など省エネ設備の普及率の高さを挙げる。一方で、既存の技術だけでは省エネ余力が少なくなっている点を指摘。既存技術の深化と合わせ、革新的技術の開発・実用化も必要になるとしている。

 5年前調査との比較では、日本の原単位改善ペースが緩やかになっている一方で、英国やドイツ、ロシア、ウクライナなど一部の国で原単位が大幅に改善していることが分かった。英国、ドイツは副生ガス回収設備の普及、ロシア、ウクライナは平炉比率の低下によるもので、既存の技術・設備が普及すれば省エネ(CO2削減)効果が高まることが改めて浮き彫りになった。

 小田研究員は「(世界規模でのCO2排出削減には)世界全体で省エネ技術の普及を進めることが有効」と話す。

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