長崎県知事選 人口ダム機能 流出止められない県都

 「できれば長崎で就職したかった。でも思うような仕事は見つからなかった」

 長崎大経済学部4年の渡邊浩佑さん(23)は古里の長崎市を離れ、今春から関西の造船大手で事務・営業職として働く。実家の近くで働きたいと考え、就職活動では地元企業の合同説明会にも足を運んだが「正直、ぱっとしなかった」。最終的に「海外と接する仕事をしたい」との希望を優先したという。

 県内からの人口流出が止まらない。総務省が1月公表した2017年の人口移動報告によると、本県は転出超過が5883人。統計開始以来、64年にわたって転出が転入を上回り続けている。特に就職、進学などの時期である15~29歳は転出者全体の半数を占める。

 こうした中、歯止めとして期待されるのが県庁所在地の「人口ダム機能」。県庁所在地が県内の他市町からの就職や進学の受け皿となり、県外への流出を防ぐ働きを指す。

 ところが、長崎市は流出をせき止められていない。

 人口ダム機能は、県庁所在地への人口集中の度合いを示す「カバー率」で計ることができる。15年国勢調査を基にすると長崎市はマイナス1・3%。福岡、沖縄を除く九州の転出超過6県の中で唯一、人口ダム機能を果たせていない=表参照=。17年の人口移動報告では、長崎市の転出超過数も1888人と全国市町村で3番目の多さだった。

 県や市は▽若者が望む職種や条件の就職先が少ない「雇用のミスマッチ」▽福岡を生活圏とする離島が多い、長崎市が県本土の端にあるなどの地理的条件-といった要因を挙げる。

 「島を出たいという生徒は多いが、ほとんどが県外を希望する」と明かすのは、五島の高校で進路指導を担当する男性教諭(38)。「長崎市内で社員寮を持つ企業は少なく、住宅手当も充実していない。給与水準は県外の企業の方が高く、市内の家賃は高い。卒業後に島を出て、長崎市で1人暮らしをしていくのは難しい」と話す。

 知事選では中村法道、原口敏彦両候補とも、若者の流出や人口減少を重要課題に挙げ、雇用創出や所得向上などの対策を訴えている。ただ、他県との圧倒的な差をみると、改善は容易には進まなさそうだ。

 長崎市出身で現在、大阪市のベンチャー企業に勤務する男性(36)は言う。「例えば市内の真ん中にスタジアムを造るような、面白い政策が必要ではないか。働く場のことだけでなく、長崎で暮らしていて楽しいと思えるような施策にも力を入れてほしい」

 長崎市長崎創生推進室は「危機感を持っている。県と連携しながら人口流出を防ぐ手だてを考え、対策を取っていきたい」としている。

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