神奈川県と監査法人トーマツは、県内のスタートアップ企業育成の支援対象のひとつに、市内福田でプラスチック製の業務用生ビール容器を製造・販売するメイクラフト株式会社(山崎重利社長)を選んだ。1月23日には、支援対象5社によるプレゼンが行われ、同社が最優秀賞に選ばれた。
メイクラフト(株)は、2015年4月に創業。昨年8月から回収不要の生ビール容器の販売を開始した。容器はプラスチック(ポリプロピレン)製で、10㍑容器。使用後はプラスチックごみとして廃棄できる。すでにビールメーカー数社と契約。累計で500本が出荷されている。
山崎社長は、1983年中央林間生まれ。15歳の時に単身アメリカに留学。18歳で帰国。その後イオングループの子会社に入社の後、父の医療機器メーカーに入社した。
回収・洗浄不要で中小コスト削減
海外の生クラフトビールが日本の金属の容器と違う、20㍑サイズのペットボトル型の容器に入っていることは、行きつけの飲食店で知った。
「全国の地ビールがどこでも楽しめれば、地ビールメーカーの発展にも各地域の活性化にもつながるのに」と考えた山崎さんは、使用される容器について調べ始める。
日本では大手・中小ともにほとんどのメーカーが金蔵製の生ビール容器を使用している。金属製の容器は何度も利用できる一方、回収や洗浄、保管にコストがかかる。大手メーカーは、卸問屋から酒販店、飲食店と流れる流通網の中で、無償で回収している。
かたや地ビールなどを扱う中小メーカーは、直接飲食店に納品しているが、有料で返却してもらい、さらにメーカーが洗浄や保管などの管理コストを負担している。そのため、全国展開できず、利用シーンも飲食店などに限定されてしまう傾向にあった。
「需要がある」と考えた山崎さんは、海外のように回収不要の容器製造を新規事業に、と自ら独立して製造・開発に乗り出すことにした。
プラスチック成型の金型作りから始まり、品質保持のための容器の色、金属製のサーバーとの互換性など様々な改良を重ねた。16年3月に開発に着手し、商品化に至ったのは翌17年8月になった。現在は専用のサーバーも開発している。
社名のメイクラフトは、「Make for Craft」をつなげた造語。「クラフトビールに役立つモノづくり」の思いを込めた。
1月23日には、「かながわスタートアップハブ」で事業のスタートアップを加速させる支援対象企業に選ばれた5社が黒岩祐治神奈川県知事らを前にプレゼン。メイクラフトは、最優秀賞にあたる「オーディエンス賞」を受賞した。山崎さんは「事業プランの革新性、メーカーの期待など風が吹いている。まだまだ改善点はあるが、『使い捨て容器』がスタンダードになる業界のインフラ整備を進めたい」と意欲を語った。