「瞬間を楽しんで」 ポーラ美術館で竹村京さん作品展 3月まで

 現代芸術家の竹村京が、トランプを引くときのような偶然性の妙味をテーマにした企画展をポーラ美術館(箱根町仙石原)で開いている。3月11日まで。

 竹村はポーラ美術振興財団の若手芸術家助成制度を活用し、2000年にドイツに留学。国や言語を超えて同じ意味を共有できる遊具としてトランプに着目した。トランプなどのカード遊びは「瞬間の選択の連続を凝縮して経験する機会」と気づき、以来、創作に取り入れている。

 1枚のトランプに、薄い白布を重ね合わせる。布には、作られた国も時代も異なる別のトランプの図柄を刺しゅうで施す。今回はそうして制作した最新作を中心に展示している。

 「トランプは難しい意味を取っ払い、見る人を解放してくれる」とも。初めに完成図があるのではなく、偶然に広がるイメージを追いかける。刺しゅうに使う絹糸の運びも、手に触れた感触のまま。自身もどこがゴールか分からないという。

 名刺交換の際には毎回、持参したトランプを相手に引いてもらう。選択できるのは1度きり。「二度と訪れない、わくわくする瞬間を楽しんでほしい」と思いを込めている。

 企画展は「どの瞬間が一番ワクワクする?」と題した。トランプだけでなく、ドミノ牌を用いた作品も初公開している。

 ◆ポーラ美術館 午前9時〜午後5時(入館は閉館30分前まで)。年中無休。電話番号0460(84)2111。

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