「崖っぷち」「ダメなら終わり」復活目指す中日・吉見の覚悟

復活を目指す中日・吉見一起【写真:荒川祐史】

2度の最多勝&5年連続2桁勝利、復活かける吉見の思い

 復活を目指しているのは、松坂だけではない。平成の怪物の加入で注目度がアップしている中日には他にも再起にかける男がいる。その1人が、かつてのエース、吉見一起投手である。

 金光大阪高からトヨタ自動車へ進み、2005年のドラフト希望入団枠で中日へ入団。2008年に先発、中継ぎ双方でマウンドに上がり、自身初の2桁勝利となる10勝をマーク。2009年に16勝、2011年に18勝で最多勝に輝くなど、5年連続2桁勝利を記録したドラゴンズのエースだった。

 しかし2013年6月に右肘のトミー・ジョン手術を受けると、そこから結果に結びつかない苦しい日々を送ることになる。2015年には右肘に再びメスを入れた。2016年には6勝をマークし、復調の気配を感じさせたが、2017年は14試合に投げて3勝7敗。今季で13年目を迎える33歳だ。

 沖縄・北谷町で行われている沖縄キャンプ。2日目の2日、右腕はフリー打撃の打撃投手としてマウンドに上がっていた。かつてエースとしてチームを支えた男が、キャンプ2日目にして、打者と対峙した。

早くもフリー打撃で登板、見逃しのストライクでが“謝罪”も

「バランスよく、ストライクゾーンの甘めで。表現はおかしいですけど、気持ちよく打ってもらおうと。その中で指にかける、オフにやってきた股関節で投げるという意識を持ちながら(投げました)」。まず1人目、松井佑介との対戦では27球。続く福田永将にも27球を投じた。「気持ちよく打ってもらう」の言葉通りに松井佑には4本、福田には10本の柵越えを許した。ただ、あくまでこれは狙い通り。

「作ってきたつもりでいたので、久しぶりで緊張しましたけど、思いのほか投げられた」と、悲観する様子は一切なし。それどころか、低めギリギリに決まる“吉見らしい”見逃しのストライクを奪うと、「ごめんなさい」と右腕が謝る場面も。「打った、抑えたではなくて、意図したボールが投げられるか」と話し「ストライクの際どいところだったので、目的が違う。試合ならいいんですけど」と“謝罪”の場面を説明した。

 5年間にわたって2桁勝利はなし。ここ5年は1勝、0勝、3勝、6勝、3勝となっている。先発ローテの座も確約された立場ではない。背水の年。「いつも言っていますけど、崖っぷち、ダメなら終わり、良かったらまたあると覚悟を持ってやっています。先を見ず、ただ、プランと目標だけは持って、日々無駄のないようにやっていきたいと思います」。悲壮な覚悟を持ち、吉見も復活を目指している。

(「パ・リーグ インサイト」成田康史)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

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