投票の温度

 朝、うっすらと雪をかぶった外の景色に気づいた瞬間、この記録的低投票率を覚悟した関係者も少なくないだろう。「春が立つ日」とは名ばかり、未明に降り始めた雪が終日ちらちら…の昨日の県内。知事選は大方の予想通り、現職の中村法道氏が大差で3選を果たした。投票率36・03%は過去最低▲“棄権の心理”をありきたりな言葉で解説するのはたやすい。政治に対する切実な願い事がない、怒りを感じるほどの失策や腐敗が見当たらない、この1票で何かが劇的に変わると思えない▲そこへ来てこの寒さ。県政に課題が山積しているのは承知しているし、投票は大切な権利で大切な義務だと分かっているけど、きょうは一歩も外に出ません…極めて自然な選択にも思える▲ただし、投票率は有権者集団の「全体の傾向」でしかない。知事さん、忘れないでほしい。一人一人の有権者にあるのは、棄権の「ゼロ」と投票の「1」だけだ▲うわ、寒っ。それでも、もこもこと防寒着に身を固めて有権者が投票所に向かう。さまざまな思いを込めて記されたどちらかの名前▲きっと寒さの分だけ「信任」は温かく、「期待」はひょっとしたら熱いはずで、その代わり「批判票」も冷たくて重い。その温度をしかと受け止めることから始めてほしい3期目の中村県政だ。(智)

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