地方創生と大学振興 産学官連携を刺激剤に 安部恵美子氏

 大学の東京一極集中の是正などを議論する内閣府の有識者会議は昨年12月、東京都特別区(23区)の大学の定員増を原則として認めないとする方針を打ち出した。

 全国の大学生(287万人)の40%が東京圏、26%が東京都に集中。中でも18%が集まる東京23区の学生を、現在の定員内に収めることで、人口の過度の一極集中を抑制しようとするものである。

 東京圏への転入超過約12万人(2016年)のうち、大学進学時の転入超過が約7万人を占めており、さらに大学時の転入者が就職時にも東京に残る割合が高いという事情が背景にある。

 一方、有識者会議の最終報告では、東京23区の大学定員抑制とともに「地方の特色ある創生に向けた地方大学の対応」も盛り込まれた。地方での魅力ある雇用創出や地方への人材還流のためには、その拠点・受け皿となる地方大学の振興が不可欠だからである。

 1月8日の本欄で里隆光氏は、「大学の『教育』『研究』の役割発揮をもっと期待」し、「若者の地域への定着」へ「産学官一体となり、対策を講じ」るべきと述べている。地方大学はこうした地域の期待に応えて、▽強みのある学問分野・領域の専門人材の育成と研究成果の創出▽地方のニーズに応じた学部・学科の再編と充実▽生涯学習への貢献▽地域の課題解決を進めるシンクタンク機能▽企業研修ニーズへの対応-などを推進するための改革を断行しなければならない。

 県内には短大も含めて、国公私立の大学が10校ある。これに佐賀県、福岡県の7大学を合わせた17の大学と、長崎、佐賀両県や経済団体が加入する「九州西部地域大学・短期大学連合産学官連携プラットフォーム」が昨年10月に発足した。各大学の強みを生かしながら、健康や医療、福祉、子ども育成などのテーマで県境を越えた共通授業や共同研究、人事交流に取り組み、大学間連携によるブランド力を強化するのが目的である。

 また、地域と大学を結んで、さまざまな課題の解決を図るためのワンストップ基地としての機能の強化を目指しているところである。

 地方創生には「若者」「よそ者」「ばか者」の力が必要といわれて久しい。大学は、学生という若者と国内外から集めた教授陣らで構成され、「研究ばか」(あくまで良い意味で)が大勢混じっている場所である。地域の多様な資源と大学との関わりがもっと深まれば、思いがけないイノベーションを引き起こす可能性もある。その刺激剤となれるようプラットフォームの取り組みを進めていきたい。

 【略歴】あべ・えみこ 1955年島原市出身。長崎短期大学長。中央教育審議会大学分科会臨時委員。幼児から大学生まで「地域の未来を支える人を育てる教育」がライフワーク。奈良女子大大学院修了。

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