遺伝性乳がん 若年で発症、卵巣がんも

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 乳がんにかかる患者の5~10%は、遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)と推定されています。遺伝子の異常が生まれつきあるため、発症する場合があります。遺伝子検査や遺伝カウンセリングなど、対処法の整備も進められています。くまもと森都総合病院(熊本市中央区)の西村令喜副院長に聞きました。(高本文明)

 ─遺伝性乳がんとは。

 「がんの発症と関係する要因には、大きく分けて環境と遺伝があります。遺伝が、がんの発症と強く関わっている場合を、遺伝性のがんといいます。代表的な遺伝性乳がんが『遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)』です」

 「米国の女優アンジェリーナ・ジョリーさんが2013年、遺伝子検査で乳がん発症の可能性が87%と高いことが分かり、予防のため両方の乳房を切除し再建する手術を受け、話題となりました」

 ─HBOCの特徴は何ですか。

 「遺伝性の乳がんは乳がん全体の5~10%です。40歳以下の若年で発症し、乳がんだけでなく卵巣がんも発症しやすい傾向があります。ホルモン療法や分子標的薬を使うことができないトリプルネガティブの乳がんを発症したり、膵臓[すいぞう]など他の臓器にがんが発症したりする場合もあります。男性が乳がんを発症することもあります」  ─HBOCの診断は。

 「乳腺や卵巣の遺伝子損傷の修復をするBRCA1遺伝子とBRCA2遺伝子を調べて、どちらかに生まれつき病的変異がある場合をHBOCと診断します」

 ─HBOCの場合、どれほど乳がん発症の確率は高まりますか。

 「一般に女性が乳がんを発症する確率は50歳までで2%、70歳までで7%といわれています。BRCA遺伝子に変異があると50歳までで33~50%、70歳までで56~87%になると報告されています」

 「卵巣がんは、70歳までに発症する確率が2%未満なのに対して、BRCA遺伝子に変異があると27~44%と報告されています」

 ─遺伝子の変異は子どもに受け継がれますか。

 「BRCA1、BRCA2遺伝子の変異が親から子に伝わる確率は、男女関係なく50%です。ただし遺伝子変異があるすべての方が必ず乳がんや卵巣がんを発症するわけではありません。日本では、血縁者が発症した家族歴のある乳がん・卵巣がん患者さんのうち、遺伝要因が見つかった方は約27%という報告があります。家族歴があるから遺伝性乳がんに必ずかかるわけでもありません」

 ─HBOCと診断された方は。

 「乳がんや卵巣がんの早期発見、治療、予防につなげるため、早い時期からの個別的・継続的な検診、薬物療法、予防的な手術が対策として挙げられています」

 ─どんな対処法がありますか。

 「両方の乳房を予防的に摘出することで、乳がんの発症リスクは90%以上、減少します。卵管、卵巣を予防的に摘出すると、乳がんや卵巣がんの発症リスクを減らせます。ホルモン療法に使うタモキシフェンの内服により、乳がん発症リスクは50%減ります。ただしいずれの方法も保険適用外です」

 ─日本HBOCコンソーシアムによると、県内でBRCA遺伝子検査、遺伝カウンセリングを実施している施設は、くまもと森都総合病院と熊本大病院です。

 「当院では、医師による遺伝カウンセリングを行っています。遺伝子検査によって分かること、分からないこと、検査のメリット、デメリットなどを十分に理解していただきます。発症前に検査を受けてリスクの有無を知り、陽性の場合は小まめに検診を受ければ、早期発見につながります。一方で、遺伝子検査を受けないという選択もあります。一人で悩まず、ぜひ一度ご相談ください。患者さんや家族の気持ちをしっかりお聞きして対応を考えていきます」

(2018年2月7日付 熊本日日新聞夕刊掲載)

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