選手の数だけ個性があり、選手の数だけキックのモーションがある。
そこで今回は、フリーキックのモーションが特に美しい選手を6人選んでみた。
1. デイヴィッド・ベッカム
【コメント】
美しいフリーキックはまるでスローモーションのように感じさせ、蹴り終わってからはその余韻に浸らせてくれるものだ。ベッカムのフリーキックはそうした意味では精度だけでなく視覚面でも非常に優れている。
まず、ベッカムはボールに対して45度、6〜7歩手前に位置を取る。写真を撮影するとボールも人も映るが、ボールから近すぎることのない距離だ。
また、ソックスが白または黒であるのも視認性に優れていて良い。彼がインフロントでボールを蹴り上げた後まで我々はそのスイングを余すことなく捉えることができる。
その間にベッカムが放ったボールはカーブしながら相手ゴールに迫る。クロスで有名なベッカムだけに距離のあるシーンではそうしたボールの軌道と振り終えた足を我々は長く見ることができる。
ちなみにベッカムはフリーキックの際に何歩下がるとかそうした動きを特にルーティン化していないという。
(コメント:編集部Q)
2. シニシャ・ミハイロヴィッチ
※16:51から
【コメント】
優れたフリーキッカーには“雰囲気”がある。
シニシャ・ミハイロヴィッチもまた、特別な雰囲気を持つ選手だった。
そのフォームの特徴は、蹴る直前に斜めに突き上げる右手だろう。あの瞬間、恐怖を抱かないGKが果たしていただろうか…。
とはいえそれは選手に限らない話であり、相手チームの監督も「彼が蹴るならGKを2人置かせてくれ」と訴えたとか。
FKでハットトリックという偉業を達成したミハイロヴィッチに相応しい逸話である。
(コメント:編集部O)
3. 中村 俊輔
【コメント】
横方向から助走に入る独特のモーションで、幾多のゴールを奪った中村俊輔。
しかし、年を重ねるごとにキックの種類が増え、状況に応じてモーションも変えるようになった。
フリーキックの脅威はもちろんのこと、モーションでファンの心を掴んだファンタジスタの一人だ。
(コメント:編集部S)
4. ティエリ・アンリ
【コメント】
「力を抜きつつボールに力を加える」という、シュートの極意を簡単にやってのけるのも彼の長所の一つであった。
それが活かせるのはFK時も同様で、ゆったりとした構えからボールをインパクトする直前に蹴り足に勢いを加えるモーションは独特。
とりわけ、2005-06シーズンのプレミアリーグ、対ウィガン戦で放ったものは、その凄みを端的に表した一撃だ。
(コメント:編集部T)
5. ロベルト・カルロス
【コメント】
稀代のパワーシューターとして、フットボールの歴史にその名を刻んだロベルト・カルロス。
彼の代名詞である“弾丸”フリーキックは優雅さ、華麗さとは無縁で、今回のテーマとは対極に位置するように思われる。
しかし、ボールから遠く離れ、小刻みな足取りから徐々に加速していく瞬間の、恐怖にも近いあの張り詰めた空気と緊張感からは、氷の結晶にも似た残酷で、冷徹で、無機質な美しさが漂っていた。
(コメント:編集部H)
6. ジェームズ・ウォード=プラウズ
【コメント】
「無回転」系のキックを操る選手が多くなった今日において、“曲げて落とす“ボールを蹴る選手は少なくなった。
しかし、独特のフォームでフリーキックのスペシャリストとして期待されているのがサウサンプトンMFジェームズ・ウォード=プラウズだ。
ウォード=プラウズのキックは「擦り上げる」と表現するに相応しい。ボールのミートとほぼ同時に勢い良く軸足が上がり、右方向に倒れるようにして右足から着地する。
まさに“曲げて落とす“ための蹴り方であり、そのモーションには美しさすら感じられる。
(コメント:編集部S)