音楽通じ思いやり説く  “リーゼント”先生に文科大臣表彰 佐世保東翔高・中村明夫教諭

 リーゼントの髪形に派手な柄のシャツとネクタイがトレードマーク-。長崎県立佐世保東翔高教諭で吹奏楽部顧問、中村明夫さん(45)は、豪快な見た目と対照的に「音楽を本当に好きになってもらうため生徒一人一人を大切にしたい」と、繊細な指導が持ち味だ。長年の功績が認められ、2017年度の文部科学大臣優秀教職員表彰を受賞。「部員や保護者、演奏を聴いてくれる全ての人にいただいた。感謝の思いを伝えたい」とにこやかに語る。

 佐世保市出身で、中学1年の時に吹奏楽(テューバ)を始めた。当時はやんちゃで、教師に「教室にいてもいなくても一緒」と言われ、誰からも相手にされなかった。そんなとき、吹奏楽部の先輩たちは分け隔てなく扱ってくれた。自分がいないと部活のみんなに迷惑をかけると実感。「初めて“居場所”を見つけた」と振り返る。

 高校でも演奏を続け、作陽音楽大(岡山県、現くらしき作陽大)に進学。卒業後はプロのテューバ奏者として活躍したが、故郷で吹奏楽の発展に尽くしたいと帰郷。県立対馬高で9年間に県吹奏楽コンクールで金賞を8回受賞。九州・全国大会へ導いた。東翔高では昨年のコンクールで金賞に輝き、初めて九州大会に出場。マーチングでも九州トップレベルを誇る。

 生徒に伝えたいのは「三つの思いやる心」。まず作曲者がどんな思いで曲を作ったのか、徹底的に考えさせる。その思いを表現するにはどう演奏したらいいのか、聴く人の立場に立ってまた考える。最後に、共に演奏する仲間を尊重しながら音色を重ねることが大切だと教える。吹奏楽部2年の吉田悠人さん(17)と松田彩花さん(17)は「生徒思いでとにかく熱い。私たちも、負けないくらい音楽が大好き」と目を輝かせる。

 「ぶれず、染まらず、流されず」-。そんな思いで髪形や服装など独特のスタイルにこだわる。「バカだなと思われるかもしれないが、卒業生が悩んでいると知ったら、県外でもどこでも車を飛ばして駆けつけちゃうんですよ」。照れ笑いを浮かべる中村さん。「今死んでも、自分の思いをつないでくれる教え子がたくさんいる」と穏やかに語った。

生徒と演奏会の打ち合わせをする中村さん=佐世保市、広田地区公民館

© 株式会社長崎新聞社