“最後の3冠王”松中氏が語る好敵手 ダル、マー君も「松坂大輔が1番だった」

復活に向けて慎重に歩みを進める松坂、名勝負演じた松中氏の思い

 12球団が一斉にキャンプをスタートさせ、いよいよ球春到来となった2018年のプロ野球。キャンプも第2クールが終わるチームもあり、徐々に実戦モードへとシフトしていく時期になりつつある。その中で連日、大きな注目を集めているのが、沖縄でキャンプを行う中日ドラゴンズ、そして、新たにチームに加わった松坂大輔投手である。

 ここまで10日間を終えた沖縄キャンプでは4度、ブルペン入りして投球練習を行なっている松坂。1回目は捕手を立たせての立ち投げのみ、2度目は立ち投げで43球、そして初めて捕手を座らせて13球を投げた。第2クールでは捕手を座らせて66球、77球と徐々に球数を増やしてきている。ソフトバンク時代にはキャンプで100球を超える投げ込みも行ってきたことを考えると、慎重に歩みを進めていると言える。

 多くの野球ファンが「平成の怪物」の復活を期待している。そして、松坂が再び1軍のマウンドに立つ日を待ち望んでいるのは、ファンだけにとどまらない。かつて、野球ファンを魅了する度重なる好勝負を松坂と演じてきた平成唯一の3冠王、元ソフトバンクの松中信彦氏もまた、その1人である。

 中日キャンプでイキイキとした表情を見せている松坂の姿を、ニュースの映像などを通して見たという松中氏。「去年よりも、ちょっと良くなっていると思いましたね。体は元気そう」と現在の右腕の印象について語り、「現役時代にいい勝負をした自分としては、やっぱり頑張って欲しいと思ってますよ」と語り出した。

バットを折りながら本塁打、1試合3発の離れ業も「あんなにワクワク出来る投手はいない」

「現役時代に1番ワクワクする勝負を出来たのは、やっぱり大輔だった。なかなか、あんなにワクワク出来るような投手なんていなかった。松坂大輔、ダルビッシュ有、最後はマーくん(田中将大)くらいかな。その中でも、大輔が1番だった」

 松坂は西武のエースとして、松中氏はダイエー、ソフトバンクの主砲として何度も対峙してきた。その2人の勝負は、平成の名勝負と言われ、数々の伝説的な戦いを幾度となくファンに見せてきた。

 その中でも、伝説として語り継がれているのが、この2つだろう。2001年6月2日のダイエー対西武戦では、松中氏は松坂のボールにバットを真っ二つに折られながらも、広い福岡ドームの右中間スタンドへ運ぶ本塁打を放った。2005年7月15日のソフトバンク対西武戦ではサヨナラ弾を含む1試合3本塁打の離れ業を演じた。通算でも130打数42安打12本塁打、打率.323の成績を残している。

「大輔との勝負は本当に楽しかったね。ストレート勝負をしてくれる、力と力の勝負をしてくれた選手だったからね。豪速球といえば、松坂大輔。“剛”は大輔だった。体の柔らかさっていうのかな、“柔”というとダルビッシュだったね。ダルビッシュは柔らかくてキレで勝負するピッチャーで、大輔はとにかく“ズドン”とくるタイプだった。本当に、いい勝負ができた相手だなと思う」

「一発勝負でいい」、「2018年の松坂大輔を見つけて」

 投手と打者という側面もあり、プライベートで深い付き合いがあるわけではない。それでも、平成唯一の3冠王に輝いた松中氏にとって“永遠のライバル”と言える、思い入れがある存在は、やはり松坂大輔なのだ。

「大輔は求められるところが高いから、結果を出すのは大変だと思うけど、勝負をした自分としてはやっぱり頑張って欲しい。トレーニングをしてきたり、アメリカで投げたりしてきているから、本来の形にはもう戻らない。その中で2018年の松坂大輔を見つけて、頑張って欲しい」

「これだけ投げていなくて、色々なことも言われているし、見えないプレッシャーもあるだろうと思う。だけど、本当に自分が納得してマウンドに立って欲しい。準備をしっかりしてね。相撲の稀勢の里関じゃないけど、出ないといけないとか、責任感で、心も体も中途半端な状態で出るよりも、一発勝負でいいから、しっかり準備して心も体も焦らずにしたほうがいいと思う。そこで結果が出れば、大輔なら復活になるし、評価も戻る可能性が大きいと思う」

 平成の名勝負を演じた好敵手も、「平成の怪物」の復活を強く願っている。

(Full-Count編集部)

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