「ドラゴンプロムナード」20年 利用低迷、進む老朽化

 長崎市元船町に、オレンジ色の巨大球体で知られる屋上庭園「ドラゴンプロムナード」がある。20年前、憩いの場として県が建設したが、利用状況は低迷が続く。使い勝手の悪さや老朽化など課題は多いが、近隣では県庁舎移転など再開発も進む。市街地中心部の穴場スポットを取材した。

 1月下旬の昼すぎ。球体直下には、だだっ広い木製デッキのスペースが広がっていた。友人とダンスの練習に来たという活水高2年の中村涼香さん(17)は「練習を見られるのが恥ずかしいから、人がいない所に来た」とほほ笑んだ。

 この日は午後2時ごろから施錠する6時までいたが、訪れたのは5人だけ。ほかは観光客2人と散歩の男性。ほとんど私の“貸し切り”状態だった。

 施設が完成したのは1998年。県によると、当時、周辺にあった倉庫群の移転先として造られ、倉庫上部に屋上庭園が建設された。整備費用は約6億円に上るという。

 昨年、団体での利用は修学旅行生の龍踊り体験(約30回)やコスプレの撮影会(約20回)。訪れた人に尋ねると「階段で足腰が鍛えられる」「ハーモニカの練習をしている人がいた」と、意外な利用法もあるようだ。

 直近で統計がある2008年の利用者は推計約1万人で、1日当たり30人ほど。要因は使い勝手の悪さだ。庭園中央に柱が立ち並びスペースを分断する。人通りが多い県道からは、長い階段を上らなければならない。

 老朽化も目立つ。デッキの壊れた部分は上から板を打ち付けており、手すりにはさびが浮く。当初、庭園中央部に敷き詰められていた小石は「投げる人がいて危ない」と取り除かれた。県の担当者は「財政状況が厳しく安全管理で精いっぱい。活用法を模索しているが簡単ではない」と頭を抱える。

 一方、好転に向けた材料もある。近くには県庁舎などが移転してきた。地域振興の核となる港を国が認定する「みなとオアシス」に、この一帯を登録する動きも進んでいる。

 登録を主導するながさき地域政策研究所(長崎市)の菊森淳文理事長は、JR長崎駅周辺のウオーターフロントは再開発が進むとして「一等地を放っておくのはもったいない」と指摘。「飲食やショップ、イベントなどさまざまな活用の可能性がある。官民で知恵を絞るべきだ」と語る。

 がらんとした施設を眺めていると、県の責任者が「自腹でも造るのか。自分なら使うのか」と考え抜いたとは思えない。公共事業の在り方を考える上で、教訓にすべきだろう。一方、課題の多い負の遺産を、金をかけずにどう再生させるか-。そんな知恵が、財政が逼迫(ひっぱく)する「斜陽の時代」には必要なのかもしれない。

 夕暮れ時。眼下の県庁舎の窓に明かりがともる。汽笛の音も聞こえてきた。長い階段を男性が上ってきた。週に2回は通ってくるという。「眺めがいい。人が少ないから静かだしね」。そう笑って立ち去った。

◎ズーム:ドラゴンプロムナード  全長約200メートル、幅約25メートル。展望デッキは一番高い所で地上約20メートル。米国の建築家が龍踊りをモチーフにデザインした。長く伸びた龍がオレンジ色の玉(直径約19メートル)を追い掛ける姿を表現しているという。開放時間は午前6時~午後6時。

倉庫屋上に広がる木製デッキ。中央部に敷き詰められていた石は取り除かれ(左側)、手すりや柱にはさびが目立つ=長崎市元船町
展望デッキからは女神大橋や長崎港が見渡せる

© 株式会社長崎新聞社