ついにここまで…今年から最寄りの油津駅が真っ赤に
広島東洋カープは、1963年から宮崎県日南市で春季キャンプを行っている。キャンプ地の天福球場は、JR日南線油津駅から歩いて10分の至便の立地。この球場ができた翌年からキャンプを行っているから、まさに「カープのための球場」だ。
日南市、特に油津地域の人々の広島カープへの熱狂ぶりは、これまでもたびたび報道されているが、今年、JR油津駅が真っ赤に変身した。昨年の段階でも、地域の歓迎ぶりは十分に伝わるレベルだったが、今年はついにここまでやった。
駅舎は2017年12月、住民有志による「カープ油津駅」プロジェクトによって手塗りされ、キャンプ開始と同時にお披露目された。今年は、カープキャンプ地へ行く前に、この駅舎をバックに撮影するファンが急増。駅の前に止まっているタクシーの運転手が、カメラマンを務めることもしばしばだ。
油津駅は、自動販売機まで真っ赤に塗られている。駅の職員も、もちろん赤いユニフォーム。ここまで徹底していると、見事というほかはない。
駅前の喫茶店は、カツカレーなどが売り物だが、マスターもママさんもカープのユニフォーム姿。マイカーももちろん赤。店には現コーチの廣瀬純などカープの選手も訪れる。
「一昨年、おばちゃん、引退するんだ、と廣瀬さんに言われたときは悲しかったよ」とママさんは語る。キャンプ取材に来たカープ大好き芸人も、しばしば取材するほどの有名店だ。半世紀を超える付き合いで、こういうディープなファンもできている。
地元民の熱い思い「うちらは歴史が違う」
油津駅の周辺は、ところどころに「赤化」したエリアがある。とくに天福球場への行き道にある商店街は、カープファンなら避けては通れない。真っ赤な鳥居の「鯉神社」、油津カープ館という施設まである。ここでは、カープ選手のシーズン中の活躍や、優勝シーン、キャンプでの練習風景などの写真、ユニフォームが展示されている。一瞬、自分がどこに居るのか忘れてしまいそうな熱気だ。カープファンはキャンプの帰りには、ここに立ち寄るのが恒例行事になっている。
商店街のすべての店舗が「広島カープセ・リーグ優勝おめでとう」のポスターを掲げている。この徹底ぶりもこの地ならではだ。
商店街を抜けると、天福球場の建物が見える。足もとの道路にはまるでレッドカーペットのような舗装が。これが名高い「カープ一本道」。この赤いラインは、天福球場まで続いている。横断歩道まで赤白に塗装する徹底ぶりだ。
JR日南線の駅にさしかかると、大量のこいのぼりが泳いでいるのが目に飛び込んでくる。風にはためくこいのぼりの大群は、広島東洋カープに対する住民の一方ならぬ思い入れを感じさせる。
セ・リーグ連覇で、日南市の盛り上がりはさらにすごいものになっている。
球場の近所に住んでいるおじさんは、犬を散歩させながら「うちらは歴史が違う。弱いときからずーっと見てきたから、気持ちの熱さが違う」と言った。愛犬に着せているウエアも、真っ赤だったのは言うまでもない。
(藤浦一都 / Kazuto Fujiura)