【MLB】「偉大な選手になる」―“元同僚助っ人”たちが米紙で証言、大谷の凄さと課題

エンゼルス・大谷翔平【写真:Getty Images】

地元紙が特集記事を掲載「オオタニは日本での成功を継続できるか?」

 エンゼルスの大谷翔平投手は14日(日本時間15日)に新天地でのスプリングトレーニング初日を迎える。「日本のベーブ・ルース」の異名を持つ二刀流のスーパースターにアメリカでも大きな注目が集まる中、地元メディアは続々と特集記事を掲載。地元紙「オレンジ・カウンティ・レジスター」は、現在アリゾナ州スコッツデールでキャンプを行っている古巣・日本ハムのチームメートの証言から「二刀流の肖像」に迫っている。

「エンゼルスでショウヘイ・オオタニは日本での成功を継続できるか? 元チームメート、日本球界の人間はそう考えている」

 このようなタイトルがつけられた同紙の記事。真っ先に登場するのは日ハムの主砲、ブランドン・レアード内野手だ。2015年シーズンに日本ハムに移籍した強打者は当初、大谷の実力に懐疑的だったという。

「自分としては、彼はそこまでいい選手ではないだろう、という感じだったんだ。彼についての噂はたくさん聞いていた。とにかく、見てみたかった。一番最初に紅白戦で彼の投球を見ることになった。彼は苦もない様子でね。90マイル後半(の速球)と変化球。彼は僕に証明したんだよ。まったく違う選手だとね」

 大谷が難なく150キロ台のボールを投げ込んできたというフィールドでの“ファーストコンタクト”の瞬間をこう振り返っている。メジャーでは、ミート力、パワー、スピード、守備力、送球の全てを兼ね備える万能型野手を「5ツールプレイヤー」と呼ぶ。エンゼルスで同僚となるマイク・トラウト外野手はまさに「5ツール」だが、レアードは記事の中で「あの年齢で彼は最高の選手の1人だよ。彼はほとんど10ツールプレイヤーだよ。投手としても打者としてもなんでもできてしまうんだ」と証言。従来の天才の2倍相当の「10ツールプレイヤー」だというのだ。

 160キロを超える剛速球や鋭い落差の変化球など「投手・大谷」の実力はアメリカでも知られるところ。ただ、日本では打者としての圧倒的な能力も存分に見せつけてきた。左方向への衝撃的な一発や、右中間最深部への本塁打などでどよめきを呼ぶこともしばしば。2016年には323打数で22本塁打をマークし、長打力.588をマーク。出塁率との合計で出されるOPSは驚異の1.004を記録している。

 米国ではまだまだ投手としての評価が高いが、レアードは記事の中で「打者・大谷」を過小評価してはいけないと主張。「毎日ショーを目の当たりしたんだよ。この3年間、彼の打撃や、修正力を見てきたよ。スマートな打者で、自分が今まで見たこともない凄まじいパワーの持ち主でもあるんだ」と分析していたという。

マーティンが指摘する“課題”「彼はカウントを有利にする術を学ばないと」

 一方、昨季までの同僚で、今季からレンジャーズと2年契約を結んだクリス・マーティン投手は「打者・大谷」がメジャーの洗礼を受ける可能性も示唆している。「(日本の投手は)打者に対するリスペクトの気持ちが高いんだ。彼らは内角に投げたがらないし、死球で怪我を負わせることを嫌がるんだ。メジャーではそんなことは起きない。内角を攻めて、窮屈にさせてこようとする投手に対してアジャストしないといけない」。大谷はメジャーの投手の内角攻めに対応する必要があると、マーティンは同紙の取材に対して提言している。

 大谷の日本での死球数は1170打席でわずか「4」というデータもある。マーティン同様、メジャーで大谷が「内角攻め」にあうことを危惧する声は多い。ただ、それは杞憂だという意見もある。「彼の腕の動きはあまりにも早くてね。すぐに回転して、ライトスタンドに打ち込んでしまうんだ。彼は本当に早く順応すると思うよ」。2016年に日本ハムでプレーし、カブスとマイナー契約を結んだアンソニー・バース投手は、大谷が内角に強い打者であると記事の中で証言。「内角攻め」は意味をなさないと分析しているのだ。

「打者・大谷」には、課題があるという。では、「投手・大谷」にはないのか。大谷は自身について、まだ成長過程の選手だと話しており、エンゼルスのビリー・エップラーGMも他の25歳と同様に育成段階だという認識を示している。すぐに結果を出すことは求めないという方針だ。チームメートだったマーティンは、日本での大谷のピッチングから“改善“の必要も感じているようだ。

「彼は一旦トラブルに陥ると、そこから全力を注ぎ込むことが見てとてる。まったくフェアじゃないよ。彼が本気になると、本当に彼にとっては余裕になってしまうんだ。彼は丁寧に投げすぎて、逆にトラブルになる。不利なカウントになる。彼のファストボールは日本では強力すぎるので、ピンチをそれで抜け出せるんだ。アメリカでは、彼はカウントを有利にする術を学ばないといけないね」

 大谷ほどの平均球速を誇る先発投手は、メジャーにもほとんどいない。だが、剛速球を武器にする投手が日本に比べて多いことも確か。カウントを有利にする投球術が成功の鍵になるのではないかと、マーティンは“アドバイス”している。

 日本ハムで大谷を知る人間は、その成功に疑念を抱いていない。バースは特集の中で「彼は偉大な選手になると思うよ。メジャーでのプレーを見るのを心待ちにしているんだ。彼にどれだけ才能があるのか、世界はわかっちゃいないんだからね」と太鼓判を押している。今季のMLB最大の注目となっている二刀流のスーパースターは、どんなルーキーシーズンを送るのだろうか。

(盆子原浩二 / Koji Bonkobara)

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