【現場を歩く】〈奥谷金網製作所・明石工場〉パンチングの技術力世界一へ

3工場体制で高付加価値品生産

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 パンチングメタル(打抜金網)を中心とした総合金網メーカーである奥谷金網製作所(本社・兵庫県神戸市、社長・奥谷智彦氏)の明石工場(兵庫県明石市、工場長・藤原祐三氏)は3工場体制のパンチングメタル製造拠点で、神戸鉄工団地内にある。同社は1967年に第一工場、84年に第二工場、2016年3月に第三工場を取得し、業容を拡大している。重工業関連を筆頭に、土木・建築や大型アミューズメント施設など様々なユーザーを持つ明石工場(敷地面積約3800平方メートル)を訪れた。(綾部 翔悟)

半世紀を超えるマルチな第一工場

 第一工場は打ち抜きなどの加工から梱包・出荷までパンチングメタルを一貫生産するマルチ工場。同工場で扱う板厚は1~16ミリメートル。第一工場では明石工場で最も古くから使用しているパンチングプレス機を配備している。奥谷社長は「40年以上経つが、この機材でないと生産できない〝味のある〟パンチングメタルもある」と話す。そのほか、自動パンチングプレス機や門型プレス機を配備している。

 明石工場で生産したパンチングは、すべて第一工場のロールレベラーによって成型加工される。また、明石工場で成型されたパンチングメタルは、第一工場で梱包・出荷される。出荷されるパンチングメタルは、ほとんどが国内向けだが、水処理ファイルター向けなどの海外輸出もある。

 同社はアメリカのシカゴやドイツのデュッセルドルフに事務所を構えており、海外展示会にも積極的に出展している。「当社の認知度は年々向上しており、北米や欧州などへの輸出もコンスタントにある」(同)とし、同社の海外輸出の売上目標は約1億円だ。

 明石工場および堺工場(大阪府堺市)で使用している金型のベースは第一工場で作製している。そのほか、パンチングメタル以外に、OEM生産している各種織金網やクリンプ金網、エキスパンドメタルなどの梱包・出荷なども行っている。

過去の失敗忘れないための標識

 第一工場の入り口には、リーマンショック後に同社が受注し、2009年12月9日に傷があったとして不適合品で返品されたステンレスのパンチングメタルが飾られている。奥谷社長は「過去の失敗を忘れず、教訓にするため、目に付くところに置いている」と身を引き締めながら、「50年以上続く明石工場の歴史で一番印象深い出来事だった」と話す。

 第一工場には、「知恵と汗とヒラメキで生産能力10%向上」などの標識が飾られている。明石工場の始まりとして、第一工場にはパンチングメタル製造の知識とノウハウが詰まっている。

高精度の難加工が可能な第二工場

 第二工場はNC(数値制御)などに適した高性能なパンチング加工機がある。アマダ社のタレットパンチプレス機が2台と、トルンプ社のレーザー・パンチング複合機が2台ある。そのなかでも、昨年9月に本格稼働したレーザ加工とパンチングを高速で行う複合機「TruMatic 7000」は生産性の向上や短納期につながっている。同工場では主に、産業用ガスタービン向けや繊維関連のフィルターなどを生産している。また、高精度の難加工が可能となる設備を配備しているため、同業者からの引き合いも多い。

昨年末、本格稼働した第三工場

 第三工場には、パンチングプレス加工の能力が約200トンあるsoenen社(ベルギー)の大型パンチングプレス機「CAPS―200」が1台設置されている。無人での加工も可能で、打抜速度は従来設備と比較すると3倍以上。国内では非常に珍しい最新設備だ。

 第三工場にはプログラミングセンターを設置している。同センターは、第三工場のパンチングプレス機だけでなく、第二工場のパンチング加工機の製造データを1台ごとにプログラミングセンターにつなぎ、生産管理システムを強化している。

 そのほか、生産性向上のためにロールレベラーなどの最新設備も設置する予定だ。

 第三工場は取得して2年ほどで、昨年末に本格稼働した。同工場の半分は他産業のメーカーに貸し出しているが、中長期的に最新のロールレベラーなどを導入する予定で、さらなる生産性の工場を目指す。

スーパーパンチングなど独自製品の拡販に注力

 奥谷社長は「パンチング業界世界一の技術力を追求する」と話す。奥谷金網製作所のパンチング技術のひとつに、「スーパーパンチング」がある。同製品は、耐圧性・耐久性・長寿命などの特長を持ち、水処理関連など環境面に適したパンチングメタルだ。また、第三工場では、板厚の半分の孔をパンチングプレスした独自製品「超スーパーパンチング」の製造が可能。高水準のパンチングメタル製造の技術により、経済産業省から「はばたく中小企業・小規模事業者300社 技術技能部門」に選ばれている。

 同社は東レプラスチック精工と共同出願し昨年に特許登録された製造方法がある。それを駆使して熱可塑炭素繊維樹脂基材(CFRTP)パンチングも生産することができ、現在、拡販に向けて取り組んでいる最中だ。同製品は曲げ強度がアルミ以上なだけでなく、ステンレスパンチングメタルに比べると耐食性に優れる。そのため、自動車部品や航空宇宙関連などに使用可能だ。そのほかにも、様々な樹脂(プラスチック)素材のパンチング加工などの製品も扱っている。

 明石工場の年間出荷売上高は約5億円以上あり全社の売上の約半分を占める。同工場でパンチングする板は、ステンレス・鉄・アルミ・チタンなどで、母材メーカーは国内外に広く引き出しを持つ。また、多種多様な母材から奥谷金網製作所独自のパンチング技術を集約し、今後も高付加価値製品の国内向けだけでなく海外向けへの生産・拡販を目指している。