【新日鉄住金グループ企業の〝今〟(17)】〈NSユナイテッド海運〉鉄鋼原料など年間8000万トンを輸送 得意分野生かし安定収益確保

 NSユナイテッド海運(NSU)は鉄鉱石や原料炭、鋼材などの海上輸送を手掛ける海運会社。年間の貨物輸送量は8000万トン近くに上り、新日鉄住金グループの原料・鋼材輸送を担う。新日鉄住金向けの輸送量は2017年度上期でおよそ2400万トン。このうち9割近くが鉄鋼原料で、特に鉄鉱石や原料炭の輸送に強い。鉄鉱石では、新日鉄住金の輸入量の約4割の輸送を手掛ける。

 旧新和海運、旧日鉄海運の2社が合併して10年10月に発足した。現行の中期経営計画(17年~19年度)は第3次。これまでの中計の成果を踏まえ、「安定収益事業への経営資源の集中」を重点戦略の柱に据え、収益力の強化を図っている。

 外航海運事業はマーケット(海上運賃)に代表される外部環境に左右されやすい。NSUも発足当初、スポットマーケットの低迷に苦しんだ。外部環境とは無縁ではいられないとしても、その影響をできる限り小さくできないか。その解の一つが「安定収益事業」の強化だった。

 NSUの得意分野は、外航では鉄鉱石や石炭、鋼材の近海輸送、内航では鋼材関連の輸送。こうした分野を中心に、新日鉄住金をはじめとする顧客との輸送契約を拡充していくことが、「安定収益」の確保につながるとの狙いだ。

 得意分野強化の象徴的な取り組みが、鉄鉱石などを運ぶケープサイズバルカー50隻体制の確立だ。17年12月末時点の船隊数は43隻。中計では600億円を超える投資を通じ、最終年度20年3月末までに46隻に拡充。21年度で50隻体制を確立したい考えだ。

 鉄鉱石専用船では、国内初の40万トン級超大型船「ヴァーレマックス」3隻を発注済みだ。竣工は19~22年。うち1隻は新日鉄住金向けの専用船として、ブラジル―日本間の鉄鉱石輸送出活用する。超大型船の導入で輸送力の拡充と競争力を同時に実現できるとみている。

 昨年は外部環境の好転で収益が増加。18年3月期の連結経常利益は59億円と前期に比べ28%の増益を見込む。だが、楽観はしていない。小畠社長は「安定した外部環境が続くとは限らない。新造バルカーの増加など不安材料もある。ドライバルクを中心とした得意分野を強化することで、外部環境が変化しても安定した収益をあげられる体力をつけたい」と話す。目標は21年度で連結営業利益120億円の達成だ。

 海運業界は現在「2020年問題」に直面している。いわゆる環境規制で、窒素酸化物(NOx)規制、バラスト水管理条約の発効に続き、20年からは硫黄酸化物(SOx)規制が始まる。従来の燃料油を使用する場合、排気ガス洗浄装置(スクラバー)の設置が必要となる。

 新日鉄住金専用船は現在27隻。スクラバーの設置や新造船への切り替えなどで対応する方針だが、スクラバーの設置だけで100億円規模の投資が必要となる。割高な適合油を使わなくてよい分、投資額はいずれ回収できる見込みだが、そのメリットはコスト競争力の強化という形で「新日鉄住金に還元する」(小畠社長)。(このシリーズは毎週水曜日に掲載します)

企業概要

 ▽本社=東京都千代田区

 ▽資本金=103億円(新日鉄住金の出資比率33・4%)

 ▽社長=小畠徹

 ▽売上高=1252億円(17年3月期)

 ▽主力事業=外航・内航海運

 ▽従業員=228人(グループで663人)

© 株式会社鉄鋼新聞社