乳がん治療の留意点 「標準治療」は「最善の治療」

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 乳がんの治療にあたっては、適切な治療法を選ぶほか、療養生活を送る上で不安を和らげることも大切です。長年にわたり乳がん治療を専門としている、くまもと森都総合病院(熊本市中央区大江)の西村令喜副院長(日本乳癌[がん]学会評議員)にポイントを教えてもらいました。(高本文明)

-治療法を選ぶための基本的な考え方は何でしょうか。

 「治療法は、臨床試験で得られるエビデンス(科学的根拠)のある治療、医療者の経験・技能、そして患者さんの好みや価値観、背景などによって決まります。特に、インフォームドコンセント、すなわち患者さんへの十分な説明と同意は、患者さん自身がよく納得した上で治療法を選ぶために、とても重要です」

-標準治療という言葉がよく聞かれます。

 「標準治療こそ最善の治療です。標準治療は、平均的な普通の治療とか、“並”の治療などと思われるかもしれませんが、それは誤解です。標準治療は、科学的根拠のある『現時点で最善の治療』のことです」

 「患者さんたちは何かいい治療法がないかと、インターネットで探し、さまざまな方法が見つかります。しかし、ほとんどが標準治療ではありません。特にインターネットには科学的根拠が不十分な医療情報があふれていますので、注意してください。また、最新治療はまだ評価が定まっておらず、標準治療とは言えません。例えば、開発されたばかりの全く新しい抗がん剤や重粒子線・陽子線治療、細胞実験レベルの治療、がんワクチンなどです」

-乳がん検診も大切ですね。

 「マンモグラフィー検診は現在、40歳以上は2年に1回の検診が推奨され、全国の市町村で行われています。また、40歳の方は、市町村が配布する無料クーポン券を利用できます。有効期限は2月末までです。早期の段階で発見できれば、ほぼ100%治すことができます」

-乳がん検診の受検率は熊本市の場合、40~69歳の女性で2015年度は26・8%にとどまっています。

 「日本は諸外国に比べて非常に低いのが現状です。ぜひ、がんを自分のこととして身近に捉えていただきたいです。そのためにも、正しい知識を得てほしいです」

-治療法が進んでいます。

 「ホルモン感受性、がん遺伝子のHER2[ハーツー]、がん細胞の増殖能力などを検査して、乳がんのタイプを調べます。このサブタイプ別に、患者さんごとに最適の治療を選ぶことができます。治療の選択肢が増え、手術後の成績、生存率は改善しています。乳がん治療は常に進化しているのです」

-がん患者は、さまざまな不安や心配を抱えています。

 「患者さんを十分にフォローしていくためには、チーム医療が大切になります。当院では、乳腺外科だけでなく、放射線科、病理の医師、看護師、薬剤師、検査技師、栄養士、理学療法士、医療ソーシャルワーカーなど、多くの専門職によるチーム医療で対応しています」

-がんとうまく付き合うには。

 「一人で闘わないことが大切です。仲間をつくり、医療者ともよく相談できるようにしていきましょう。患者会など、治療以外の支援体制も整ってきています。当院でも、患者会を毎月1回、開催しています。一人で悩まず、希望を持ち、笑顔で過ごしましょう」

◇乳がん患者会「肥後ほほえみの会」 毎月第1金曜午後1時半から、くまもと森都総合病院(熊本市中央区大江3の2の65)で。参加無料。同病院乳腺センター外来TEL096(364)6000。

(2018年2月14日付 熊本日日新聞夕刊掲載)

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