熊本地震で全壊のジェーンズ邸、移築どこに 水前寺案に不信強く

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熊本市がジェーンズ邸の移築を検討している通称電車通り沿いの水前寺江津湖公園(水前寺地区)=同市中央区
熊本地震で全壊する以前のジェーンズ邸。1970年に、水前寺成趣園東側の、やや奥まった場所に移築された=2013年5月、熊本市中央区

 熊本地震で全壊した熊本市中央区水前寺公園の県指定重要文化財「洋学校教師館(ジェーンズ邸)」を、現在地近くの水前寺江津湖公園内に移築するとした市の方針に、創建地(同区古城町)一帯の住民が反発している。前市長が、創建地を含む熊本城域への移築を公約としていたためだ。市は新年度一般会計予算に移築先の造成費を計上したい考えだが、突然浮上した「水前寺移築」案に不信感は根強い。(益田大也)

 「創建地周辺に戻すとずっと言っていたのに、唐突に水前寺移築を言い出した」「熊本の近代が始まった場所の重みを大事にすべき」。1月下旬に開かれた市と市民の意見交換会では、校区内にある創建地への“回帰”を待ち望んでいた一新校区の住民が、疑念をぶつけた。

 ジェーンズ邸は現存する県内最古の木造洋風建築。1871(明治4)年、熊本洋学校の教師L・L・ジェーンズの居宅として、現在の第一高の場所に完成した。西南戦争の際は、日本赤十字社の前身・博愛社発祥の舞台にもなった。

 その後、熊本中央署付近、メルパルク熊本付近を経て、1970年に現在地へ。地元では「水前寺に来て50年近い。愛着もある」と話す人もいる。

 市は前市長の公約を受け、2011年に創建地回帰に向けて調査を開始した。移築先として第一高や周辺の公園など約10カ所を検討したが、結論を出す前に地震が起きた。

 市は国の災害復旧費補助を活用し、21年度の施設再開を目指している。現在地が奥まった場所であることから、市文化振興課は「せっかくなら市民や観光客の目に付く場所に移せないかという声があり、文部科学省との協議で『現地復旧費を超えない限りで移築も可能』と見解を得た」と説明する。

 移築場所を再検討した結果、「古城地区が理想だが、今は第一高があり、校内に不特定多数の人が立ち寄る施設を設けるのは困難。災害復旧費補助を使う以上、早急に取り組む必要がある」と判断。それ以外の城域内への移築は「史実を基本に整備する」という熊本城保存管理の方針に合わないとした。

 水前寺江津湖公園への移築には、県文化協会(吉丸良治会長)の要望もあったという。ジェーンズ邸の保存修理検討委員会委員長を務める猪飼隆明大阪大名誉教授は「創建地が無理ならば、どこにあっても価値は同じ。補助金の条件や観光面での活用などを考えると、市の方針が最善ではないか」と話す。

 しかし、一新校区自治協議会長の毛利秀士さん(75)は「東日本大震災では今も、補助金を使った文化財復旧が行われている。熊本市も国と粘り強く交渉すべきだ」と指摘。「熊本城域は時習館や熊本洋学校など、熊本の教育の原点と言える場所。歴史を生かす方法を簡単に諦めるようでは、他県の人から笑われてしまう」と訴える。

(2018年2月14日付 熊本日日新聞朝刊掲載)

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