液状化対策実証実験へ 被害集中の熊本市近見地区で

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液状化対策工事の実証実験が行われる、ふれあい公園=熊本市南区

 熊本地震による地盤の液状化で被害が集中した熊本市南区近見地区で、再び液状化が起きないようにする対策工事の実証実験が近く始まる。地下水位を下げる工法の特徴や期待される効果などについて、専門家などに聞いた。

 熊本市によると被害が多いのは白川から南に広がる約40ヘクタールで、国道3号と平行する細長いエリア。熊本地震では震度5弱~6強の揺れがあったとみられ、住宅など857戸が液状化で傾くなどした。周辺では電柱が沈んだり砂が噴き出したりする、液状化特有の現象が目立った。

 地盤工学の専門家で市液状化対策技術検討委員長の北園芳人・熊本大名誉教授(68)によると、液状化は、粒子同士がかみ合ってバランスを保っていた地中の砂が、地震でゆすられてバラバラとなり水中に浮いたようになる状態。「地下水の量が多く、地表近くまで水位がある緩い砂の層で起こりやすい」と北園名誉教授。

 近見地区は地下2~10メートルに緩い砂の層があり、2メートルほど掘ると水が出てくるほど地下水が多いという。

 こうした地盤では、地下水位を下げたり、宅地の地下に堅い格子状の壁を設けて地盤の変形を抑えたりして、液状化を防ぐ工法が一般的。国の補助事業があり、(1)3千平方メートル以上の土地(2)区域内の家屋が10戸以上(3)道路など公共施設と宅地を一体的に対策できる、などの条件を満たせば補助を受けられる。

 熊本市が選んだ工法は地中に排水管を埋めて地下水を抜き、水位を下げる方法。東日本大震災で液状化が起きた千葉県千葉市や茨城県神栖市などで採用された工法だ。千葉県浦安市が採った格子状の壁を地中に造る工法は「住宅地が入り組む近見地区には適さないと判断した」(同市)。

 実証実験は、近見地区のふれあい公園で実施。水を通しにくい層まで届く長さ11メートルの矢板で500平方メートルを囲い、排水管を埋め込む。矢板で地下水を遮断した上で、排水管で地下水位を約3メートルに下げる計画だ。

 地下水位を下げると地盤も沈下する。実証実験では8~13センチ沈むとみており、「均等に地盤を下げられるか検証する必要がある」と北園名誉教授。住宅と同程度の荷重をかけて、地盤の沈み具合を確かめるほか、矢板の外側の地盤への影響、最適な排水管の深さなども調べる。

 ただ、こうした対策は、今後の地震で液状化被害を軽減することが目的で、既に傾いた建物を元に戻すものではない。また地盤の状況は場所により大きく異なるため、実証実験で得た結果を別の場所に生かせるのか見極めも必要となる。

 豊富な地下水は生活に恩恵がある一方、地盤災害を引き起こすリスクも併せ持つ。このため北園名誉教授は、住宅を建てる前に地盤を調べ、対策することが重要だと強調。「液状化などの可能性がある弱い地盤を改良する方法は確立されている。安心して住める家を建てるには、まず地盤を調べて」と話している。(松本敦)

(2018年2月14日付 熊本日日新聞朝刊掲載)

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