いじめ・虐待の相談窓口 子ども救済第三者機関設立へ 長崎市の市民団体 医療、法律専門家交え

 いじめや虐待などに苦しみ子どもが命を落とすケースが相次いでいるとして、長崎市の市民団体が相談・救済事業として民間常設の第三者機関「子どもの権利オンブズパーソンながさき」の設立準備を進めている。公的機関が見逃した問題をすくい上げ、法律や医療に詳しい専門家(オンブズパーソン)を交えて命と権利を守る試み。5月の開設を目指し、18日に識者を招いた学習会を開く。

 運営主体は、子どもの支援活動に取り組む県内の団体と個人でつくる「子どもの権利条約ながさきネット」。救済の対象はいじめ、虐待、体罰、差別などを受けている県内の子ども(18歳未満)で、保護者や教員の相談も受ける。

 設立の背景には、本来子どもの権利救済をすべき学校や公的機関が正常に機能していない、との懸念がある。

 2014年1月に新上五島町立奈良尾中3年の松竹景虎さん=当時(15)=がいじめを苦に自殺した問題を巡り、町が設置した第三者委は、学校が松竹さんに対するいじめを把握していたのに対処しなかったと指摘。同年7月に佐世保市で起きた高1女子同級生殺害事件では、児童相談所が医療機関との連携を十分に取っていなかったことも明らかになった。

 同ネット世話人の中村結花さんは「公的機関や学校が問題を拾いきれないケースは少なくなく、自らの対応の検証も閉鎖的。子どもと対等に向き合い、小さなSOSに気付く組織が必要と考えた」と話す。

 相談窓口「オンブズルーム」を長崎市内に設置し、離島や郡部に出張する訪問相談も検討している。窓口にはコーディネーターが常駐し、助言をしたり相談機関の紹介をしたりする。

 事態が深刻な場合、相談者の承諾があれば、弁護士と医師、学識経験者3人の「オンブズパーソン」とコーディネーターによる検討会議を開いた上で、コーディネーターが相談者に専門的な視点に基づく解決策を助言したり、公的機関に救済を求めたりする。より強い対応が必要な場合は、オンブズパーソンが介入して関係機関に直接、働きかけることも想定している。

 設立に向けた学習会は18日午後1時半から、長崎市魚の町の市男女共同参画推進センター・アマランスで。兵庫県川西市で子どもの人権オンブズパーソン専門員を務めた鹿児島純心女子大の福田みのり准教授が講師を務める。資料代300円。問い合わせはNPO法人県子ども劇場連絡会(電095・825・0533)。

「子どもの権利オンブズパーソンながさき」のイメージ

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