金属行人(2月16日付)

 「整備支援で世界初のAIシステム」。弊紙の1面を飾った見出しだが、最近の記事ではない。1991年3月22日付の紙面に掲載されたもので、当時の新日鉄・大分製鉄所の高炉でその最新システムが稼働したと伝えている▼この記事の「AI」とはもちろん人工知能のこと。今をときめくAIだが、その技術が誕生したのは50年代にさかのぼり、これまで二度にわたり世界的に導入機運が高まった経緯がある。80~90年代の第二次AIブームの時には日本鉄鋼業でも世代交代を乗り切ることなどを目的に高炉メーカーが相次ぎ導入。前述の大分もその一例で、あくまである程度の範囲でだが、ベテランと同様のアドバイスを当時のAIがこなせるようになった▼現在はいわば第三次AIブーム。高速計算が可能なハードの登場や、大量の画像や音声データを容易かつ安価に収集・記録できる環境もあってAIは格段に「成長」を遂げている。鉄鋼各社も競争力強化に生かそうとさまざまに試みているようだ▼サラリーマン川柳にある。『AIに 負けない俺の 第六感』。読者の中にも心意気を同じくする方が少なくないだろう。日本鉄鋼業の競争力の源泉は現場力。現場を支えるツールとしてAIを生かし、自動化できない強みをより強くしたい。

© 株式会社鉄鋼新聞社