新日鉄住金「大河内記念生産特賞」受賞 ステンレス製鋼に合金鉄溶解炉導入、八幡製鉄所内でクロムを循環利用

 新日鉄住金は15日、17年度の大河内記念生産特賞の受賞を受け、受賞技術の概要を発表した。受賞技術は八幡製鉄所・戸畑地区(北九州市)で確立した資源循環型のステンレス製鋼プロセス。同賞の審査では、学術面だけでなく実用化後の成果も評価される。同製鉄所では2010年度に受賞技術を実用化して以降、従来難しかったクロムを含有する所内発生物のほぼ全量リサイクルを達成するなど着実に実績を積み重ねており、こうした成果が高く評価された。

 八幡製鉄所・戸畑地区はクロム系のステンレス製造に、高炉による溶銑と高炭素フェロクロム合金鉄を主原料として利用している。従来は転炉を用いて溶銑の脱炭処理とフェロクロム合金鉄の溶解を同時に行っていたが、転炉内でフェロクロム合金鉄を溶解するには多量の熱源を消費してしまう。そのため製鉄所内で発生するクロムを含有する鉄スクラップなどのリサイクルは難しかった。

 この課題を解決に導いたのが受賞技術の「YES」。転炉の前工程に、同技術の要となる合金鉄溶解炉を10年4月に導入。これによりクロム含有鉄スクラップを大量に溶解できるようになり、製鉄ダスト、スケール、転炉スラグも含めたクロム系の所内発生物をほぼ全量リサイクルできるようになった。環境面だけでなくコスト削減でも大きな成果を挙げている。

 合金鉄溶解炉はアーク熱で鉄スクラップなどを溶解する電炉の一種。炉底からアルゴンガスを吹き込むなど一般的な電炉よりかく拌力が強く、装入物を効率的に溶解・還元できる。

 スラグ発生量の削減も達成。従来は転炉内で生じた酸化クロムを還元するのにフェロシリコン合金鉄を利用していたが、スラグ発生量が増える課題があった。合金鉄溶解炉の活用によりフェロクロム合金鉄に含まれるシリコンを還元材として活用できるようになり、フェロシリ合金鉄の使用減によりスラグが減少、コスト削減にもつながった。

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