都心に雲仙野菜売り込め 販売・流通業とコラボ 総菜・弁当店オープン

 雲仙市と農産物の販売・流通を手掛けるアグリゲート(東京・左今克憲(よしのり)社長)は昨年12月、東京都内に総菜・弁当販売のコラボ店「雲仙市×旬八キッチン」をオープンした。市特産の野菜を使った弁当や農産物が並ぶ店内は、「産地直送」を求める客でにぎわう。市内では同社と連携した集荷会社も発足し、首都圏のマーケットを狙った“新たな農業ビジネス”の模索が始まった。

■出合いは突然

 東京都港区虎ノ門、オフィス街の一角にあるコラボ店には、昼食時となるとサラリーマンが列を作る。お目当ては同市産のサツマイモやジャガイモ、ブロッコリーなどをふんだんに使った弁当だ。約50平方メートルの店内には、同市産のジャガイモやネギ、レタスなどを中心に全国から集まった旬の野菜も並ぶ。壁には同市のポスターも貼られ、市観光物産課は「農産物の消費拡大と同時に首都圏での観光PRにもなる」と期待する。

 アグリゲートは2010年設立。都内で昔ながらの八百屋スタイルで対面販売にこだわった「旬八青果店」7店舗、弁当や総菜を提供する「旬八キッチン」4店舗を運営し、都市部と地方の農業をつなぐ事業を展開する。

 雲仙市と同社の出合いは4年前にさかのぼる。都内で八百屋を展開する会社があると知った金澤秀三郎市長が、同社の青果店を訪れたのがきっかけだ。左今社長は「急に来たものだからびっくりしました」と笑う。「うち(雲仙市)の農産物もお願いできないか」。市長の申し出に呼応し翌年、左今社長は雲仙を訪問。ジャガイモやブロッコリー農家、農産加工組合などを視察した。短期イベントを経て16年から常時販売が始まり、昨年末のコラボ店オープンにつながった。

■新たなモデル

 同コラボ店の実現を機に、地元生産者が集荷会社「アグリネットワーク」(長田篤史代表)を設立。アグリゲートの要望に合わせて市内農家の農産物を取りまとめ、週1回、10トントラックで東京まで運ぶ。

 約20の提携農家などがレタスやホウレンソウ、ミニトマトのほか、こぶ高菜や雲仙茶などを出荷。アグリゲートは提携農家から作物を一括して買い取る手法を取り、農家としても大きさや形が基準に満たない規格外品も買い取ってもらえるため、安定収入につながる。規格外の野菜は調理して弁当の食材へ、これまで農家が捨てていたブロッコリーの葉などは野菜ジュースの原料として使われる。

 長田代表は「廃棄していた葉なども買い取ってもらえ、作った野菜がすべて活用されることで、農家の意欲向上にもつながっている」と話す。今後も取引農家を拡大し、新たなビジネスモデルとして確立させていく方針だ。

 1月、同市千々石町であった農業研修会。左今社長は生産農家ら約200人を前に、自らの農業への考えや経営改革について講演。最後にこう締めくくった。

 「農業は人の生活を支える基本。みんなで協力して未来に『おいしい』をつないでいきましょう」

昨年12月にオープンした「旬八キッチン」と雲仙市のコラボ店=東京都港区(雲仙市提供)
雲仙市産の野菜を使った弁当と温野菜セット、野菜ジュース(雲仙市提供)
トラックに積み込む前の農作物を点検する長田代表=雲仙市愛野町

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