「夫婦でいるから大丈夫」見方変えて 九産大国際文化学部講師 小池高史氏

 佐世保市で今年1月に発覚した妻遺体放置事件を受け、老年社会学が専門で、団地での高齢者の社会的孤立について研究を続ける九州産業大の小池高史講師(34)に、男性高齢者の孤立の背景や孤立を防ぐために必要な取り組みについて聞いた。

 -そもそも高齢者の孤立は何が問題なのか。

 孤独死だけではなく、特殊詐欺や悪徳商法などの被害に加え、健康状態の悪化にもつながりやすい。孤立のリスクが高い高齢者の特性として▽収入が低く経済的に困難を抱えている人▽未婚や子どもがいない人▽男性-の三つが多くの調査で明らかになっている。

 -なぜ男性高齢者は孤立しやすいのか。

 特に会社勤めだった人は、住んでいる地域と職場が異なる。仕事を通した人付き合いに偏るため、定年退職を機に(人間関係が)なくなってしまう。また人に助けを求めないことや愚痴を言わないことなどを“男らしさ”としてきた世代でもある。身体が衰えて、他人の手を借りることや教えてもらうことが増えると、それを苦手に感じ、人との関わりを避けてしまう。

 -ふれあいサロンなど各地で高齢者の居場所づくりが進んでいる。

 身近な人に援助を求めようとする女性と違い、男性は公的機関に助けを求めようとする傾向がある。そのため、地域住民が運営するふれあいサロンには、行きづらいと感じる人もいる。特定の日だけ男性専用にするなどの工夫がいるのではないか。

 -地域は男性高齢者をどのように見守ればいいのか。

 自ら助けを求められない人がいることを認識しなければならない。気になる人がいたときに、役所や地域包括支援センターなどに知らせることも見守りの一つだ。今回の事件は男性高齢者の孤立問題と強く関連している印象がある。しかしその前に高齢夫婦の孤立があったと思う。夫婦であれば外部と接触をしなくても生活ができ、外から見えない問題もある。「夫婦でいるから大丈夫」という見方も変えるべきだ。

「助けを自分から求められない人がいることを地域は認識すべきだ」と話す小池講師=福岡市東区、九州産業大

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