金属行人(2月19日付)

 「年度末は仕事がやり切れないので、少し手伝ってくれないか」―東海地区のある鋼材加工業者は、交流のある同業の社長からそんな話をもらった。まずは「ありがたい話」と表情が緩む▼しかし、自社の加工ラインも、フルではないがそれなりの稼働率。そこに隙間をつくって依頼された仕事をやりくりしなければならない。「やはり世の中、好景気なのかな」と思ったが、自社の営業員からの報告や伝票を見ると、それほどの手応えは感じない。むしろ、仕入れ価格の上昇、遅れ気味の顧客への仕入れ値高転嫁、人手不足、トラックなどの手配の難しさなど課題は山積している▼何気なく同業の社長に聞いてみた。すると「人手不足で残業規制にも引っかかってしまうので、お願いすることにした」という。それで謎が解けた。考えてみれば「当社も休日を増やしたり、残業をなるべく減らしたりして人材確保を考えている」のだ▼労働基準監督署が来社する話も、よく聞くようになった。工程管理表に目をやりながら、時代の変化、日本のものづくりの変化を肌で感じつつ「人海戦術をどこまでロボット等に置き換えられるのか。賞味期限付きの需要増の中で、設備投資の推進は将来のデフレ再燃につながりはしないか」などと思いを巡らしたという。

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