高卒大砲は「予想不能」、岩見は250発以上…アマチュア大砲はプロでも大砲に?

六大学野球で通算21本塁打を記録した楽天・岩見雅紀【写真:高橋昌江】

アマチュアの大砲はプロでも大砲になれるのか?

「和製大砲」。それはロマン。それは日本人の夢と希望。そしてそれは、プロ野球界の多くの球団が、長年にわたって求め続けているもの。

 高校通算111本塁打の清宮幸太郎内野手を筆頭に、2017年ドラフトでも、多くの大砲候補がプロの世界に飛び込んだ。競合の末、清宮は北海道日本ハムに、高校通算65本塁打の安田尚憲内野手は千葉ロッテに入団している。

 また、楽天が2位指名した慶應義塾大学の岩見雅紀外野手は、通算21本塁打で六大学野球の本塁打記録歴代3位に名を連ねた。もちろん、プロで彼らにかかる期待は大きいだろう。

 しかし、あらゆる条件が異なるアマチュアで残した記録と、プロで残す記録には相関があるのか。アマチュアで本塁打を量産した彼らは、日本プロ野球最高峰の舞台でも多くのアーチを描けるのだろうか。今回はその疑問を「回帰分析」を使って見ていきたい。

 回帰分析とは、2つの変数のうちで、一方の変数から将来的な値を予測する「回帰直線」を求めるものである。今回は、過去にプロ入りした選手のアマチュア記録とプロ通算記録から、これからプロで戦っていく選手の「将来的な本塁打記録」を予測していく。

回帰分析の図1と図2【画像提供:(C)PLM】

「回帰分析」で見る、高卒大砲がプロで残す成績とは

 ではまず、高卒大砲の「将来的な本塁打記録」について見ていこう。

 高校通算本塁打記録の歴代1位は、前述の清宮の111本だ。以下は2位・山本大貴氏(107本)、3位・黒瀬健太選手(97本)と続く。埼玉西武の中村剛也選手は83本で歴代8位、北海道日本ハムの中田翔選手は87本で同5位である。

 ところが、高校通算本塁打10傑の中でプロ入りしていない選手も複数おり、3位に入っている福岡ソフトバンクの黒瀬はプロ通算0本。10位の巨人・岡本和真はプロ通算1本と、まだ結果を残せていない。

 そこで、図2を見てほしい。縦軸はプロ通算、横軸は高校通算本塁打。灰色の点は、高校通算本塁打ランキング上位15選手のうち、プロ入りした11選手(清宮を除く)を散布図にしており、上位選手自身の位置を表す。

 そして、青い線(回帰直線)は、「高校通算で●本を打った選手がいたとして、プロでは通算●本を打つだろう」ということを予測している。高校通算で●本を打ったなら、プロ通算●本塁打を打てる「可能性」があるということを示しているのだ。

 しかし、見ての通り青い線はほぼ水平で、高校通算本塁打が増えてもプロ通算本塁打は増えない。高校通算本塁打ランキングの上位選手がプロでも大成するとは言い難く、清宮や安田がどのような選手に成長するのかは、素直に「分からない」と言うしかない。

岩見はプロ通算250本? 六大学大砲がプロで残す成績とは

 それでは、「大卒大砲」の場合はどうだろうか。

 今回は、岩見が所属していた東京六大学野球の選手に絞って見ていきたい。六大学通算本塁打ランキング上位選手を見てみると、歴代トップは高橋由伸氏(23本)、2位は田淵幸一氏(22本)、4位は岡田彰布氏(20本)と、そうそうたる顔ぶれが並んでいる。

 では図1を見てほしい。ここでも上位選手のうち、プロ入りした16選手(岩見は除く)を散布図にした。「六大学通算で●本を打った選手がいたとして、プロでは通算●本を打つだろう」ということを予測した青い線(回帰直線)は、右上に向かって伸びている。

 つまり、「六大学通算本塁打が多いほど、プロ通算の本塁打も多くなる」のだ。そしてこのモデルから導くなら、大学通算21本の岩見選手の「将来的な」位置は、図1に示している通り。彼はプロ通算で250本以上を打つ「可能性」がある大砲なのである。

 以上、アマチュアの大砲の「将来的な記録」を、回帰分析で見てきた。

 しかし、あくまで今回の分析で使用したデータはごくわずかで、名前の挙がった選手の将来を保証するものではない。

 清宮や安田、岩見などのアマチュアの大砲は、これまで与えられた場所で素晴らしい成績を残してきた。尊敬すべきOBに続き、彼らも球史に残る選手になることを期待している。

(Full-Count編集部)

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