【この人にこのテーマ】〈野原HDが参画「BIMobject Japan」の事業戦略〉《東政宏社長と野原弘輔取締役(野原HD取締役)》/建設プロジェクトをデジタル一元管理

生産性向上に貢献

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 建設資材大手の野原ホールディングス(HD)は昨年末、建築物のデータベースを一元管理するデジタルプラットフォーム「BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)」を世界展開するBIMobject社(本社・スウェーデン)と、新会社「BIMobjectJapan」を設立した。今月初旬には東京都内で説明会を開催し、新会社の東政宏社長と野原弘輔取締役(野原HD取締役)が事業概要や運営方針などを語った。(敬称略)(中野 裕介)

――まずは野原グループの事業展開について。

 野原「弊社は1598年に長野県飯田市で綿の問屋として創業し、今年で420年を迎える。前身の野原産業は1947年に創業し、現在では建設資材の販売・施工を中心に年商1200億円の企業グループに成長している。昨年の70周年を機に持株会社化し、将来に向けて事業構造を転換しやすい組織体制に移行している。グループでは各事業とも既存の市場で一番になれるよう差別化に取り組みながらも、マクロの観点で日本の建設市場は徐々に縮小していくと考えており、7年ほど前から新規事業に注力している」

――新規事業とは具体的に。

 野原「これまでになかったプリント技術を使うことで色柄のバリエーションを無限大まで増やすことに成功したデザイン壁紙ブランドや、時間単位で提供する素敵で非日常的感のあるキッチン付きレンタルスペース、グッドデザイン賞の受賞作品を集めた国内唯一のデザインショップ、日本で最大の商品点数を誇る建材のEコマースサイト『アウンワークス』などが挙げられる」

――新会社の発足に至る背景や経緯は。

 野原「建設のプロジェクトは通常、オーナーや設計者、建設会社、建材メーカーなど多くの参加者が複雑に絡み合って進行する。参加者間でコーディネーションが円滑なプロジェクトでは、ムリやムダ、ムラが少ないのに対し、そうでない場合は時間がかかったり、コスト増につながったりしてしまう」

 野原「BIMの技術や周辺のデジタリゼーションに関する技術が強力なプラットフォームになると捉え、2016年からBIMの導入支援事業に乗り出した。今後デジタル化した建設プロジェクトは、デジタル化していないプロジェクトと比べても飛躍的に生産性が向上すると考えており、最近相次ぐAIやAR、VR、ロボティックスといった先端技術もBIMのようなデジタル化したプロセスで活きてくるものと考えている」

――建設業界ではこれまでにあまりない発想だ。

 野原「BIMの本格的な普及とメリットを最大限に生かすためには、フロントローディング(=建設プロジェクトにおける意思決定の段階を前ずらしにする)の考え方が欠かせない。プロジェクトが後工程に進むに連れて部材の変更や、ムリ・ムダ・ムラによる変動のコストが大きくなるためだ。できるだけ早い段階で、設計段階で製品を決めることはコストの上でも重要な要素であり、その点で体系だったBIMのオブジェクトのデータベースが必要であると考えていた」

 野原「もともと弊社ではシンガポールで建材製品のデータベース事業に関与し、自社でオブジェクトのデータベースの開発を考えていたが、BIMobject社が運用するサイトの先進性を痛感した。そんな中、弊社の方からアプローチした。昨年2月に初訪問して以来、協議を重ねる過程で両社の思惑が一致し、10月の設立合意に至った」

メーカーとユーザーつなぐプラットフォーム提供

――新会社ではどうBIMを主導していくのか。

 東「端的に言えば、BIMobjectはメーカーとBIMユーザーをつなぐ場所の提供だ。これまでメーカーはそれぞれのユーザーに図面を渡したり、直接訪問したりといった営業展開や、あるいはWEBを使ってカタログをダウンロードしてもらうなどのアプローチだっただろうが、BIMを使えばいずれの商品データも3Dの形状でユーザーに情報提供できる。BIMはコネクト部分に優れており、各CADソフトメーカーのアプリケーションに対応しているため、ユーザーも使いやすい」

 東「BIMに反映するデータは各メーカーで作成してもらわなければならないが、BIMobjectのクラウドによってWEB媒体を一元管理できる。メーカーはしっかり管理、更新すれば分析ツールとして有効であり、マーケティングデータも提供可能だ。メーカーからホスティングサービスの掲載料やBIMモデルの制作費用を頂き、ユーザーは無償でBIMobjectのクラウドから必要な情報を入手する。自社専用の企業ライブラリーを求める大手ユーザーのニーズにも、クラウドソリューションのオプションとして対応できる」

体系的なデータベースを構築、拡張性高いソリューション開発

――BIMobjectの運用状況は。

 東「現在世界で1千社以上のメーカー、64万人を超える会員がユーザーとして登録しており、その数は日々増えている。ユーザーのダウンロード数は欧米が圧倒的に多く、アジアでもベトナムは日本の8倍に上るなど利用のすそ野が広がっている。メーカーにとってはどれぐらいのユーザー数かというのが大きなポイントの一つであるのに対し、ユーザーは掲載メーカー数、商品数、様々なファイル形式に対応しているかといった利便性を重視する」

 「BIMobjectはユーザー数、メーカー数とも世界最多の規模を誇る。今後は環境を構築していく中で、ARやVRをはじめいろいろなものとつながっていく。一連のプラットフォームは潜在的に高い開発能力を備えており、BIMobjectの普及とともに拡張性あるソリューションをどんどん提供していきたい」

――日本ではどのような展開を目指していくのか。

 東「新会社では向こう10年間でメーカー数1千社、ユーザー数50万人を目標に掲げている。すでに本社が日本にあり、グローバルに展開しているメーカーは海外で登録している場合もあるが現状はすべて海外向けのものだ。今月から運用を始めているが、最初から全面的にメーカーに委ねるのは難しいとみられ、我々が情報の入力をはじめユーザーをサポートする」

 「設立祝賀会の翌日に開催したBIMobjectのサービスやコアビジネスを紹介するイベント『BIMobject Live 2018 in Japan』に代表されるように、さまざまなイベントへの参加をきっかけに『まず知っていただく』ことで、導入を考える機会につなげてもらいたい」

――野原HDにとって新会社の位置づけは。

 野原「日本市場におけるBIMのプロジェクト比率に比例して、その重要性が上がってくるのではないか。新会社でやることは、本質的には当社が70年近くやってきていることとほとんど変わらないと認識している。もともとは建材メーカーの製品が新しく出てきた時に施工会社にお伝えしたり、施工会社がモノをつくるときに建材メーカーに情報提供させて頂いていたりした。その点BIMobjectがやろうとしていること、できることは変わらない。建設業界のデジタル化が大きく進むことになるとその位置関係も変わってくるだろう」

東京で新会社設立祝賀会/紹介イベント開催

 BIMobjectJapanの設立を受け、出資する野原ホールディングスとBIMobject社は1月31日と2月1日の2日間、東京・六本木のスウェーデン大使館で記念祝賀会と、事業内容や関連分野などを紹介するイベント「BIMobject Live 2018 in Japan」を開催した。

 記念祝賀会では、野原HDとBIMobject社の代表らが挨拶に立ち、BIMを活用した建設情報のデジタル化を通じて日本市場で情報価値の最大化に貢献していく考えなどを強調。来賓からは国際競争力の維持・向上やBIMの先鋭性、今後果たす社会的使命などに対する期待の声が祝辞として寄せられた。

 イベントはBIMobject社がサービスの提供を始めた翌年の2013年から本拠を置くスウェーデンを中心に毎年実施しており、アジアでは今回が初の試み。BIMobject社の経営陣や有識者らが登壇、国内外から参集した設計事務所や建材メーカーの関係者ら約80人が建設業界におけるデジタル情報のプラットフォームづくりや有益なソフトウェアサービスの提供について理解を深めた。

 BIMobjectJapanは昨年12月27日に設立。資本金は約2億7千万円で、野原HDが49%、BIMobject社が51%出資する。