【JFEエンジニアリングの社会インフラ本部の事業戦略】〈代表取締役副社長・石井孝本部長〉国内、鋼製サイロシェア5割目指す 海外、環インド洋・アフリカなどに照準

 JFEエンジニアリングの社会インフラ本部は鋼構造本部と産業機械本部を統合して17年4月に発足。港湾施設関連での包括的な営業活動や海外での製品ラインアップ拡充など成果が挙がりつつある。本部長を務める石井孝代表取締役副社長に事業の現状と展望を聞いた。(村上 倫)

――まず鋼構造分野の現状についてお聞きしたい。

 「橋梁事業の売上規模は約350億円。国内の新設橋梁需要が約20万トンとされる中、当社は10%程度のシェアを占めている。これまでに気仙沼大島大橋や横浜環状北西線青葉地区上部・橋脚(その1)などを受注した。また、橋梁改築工事が拡大傾向にあり、15年から改築プロジェクト部を設置して対応している。昨年度は板橋熊野町JCT間改良工事や堀切小菅JCT間改良上部・橋脚工事を、今年度は柳樽川橋他9橋橋梁補修工事を受注するなど繁忙だ。足元は名古屋圏環状道路など名古屋の案件を中心に応札しており、四日市臨港道路なども工事の最盛期を迎えている」

JFEエンジニアリング・石井代表取締役副社長

 「一方、鉄構インフラ事業は100億~150億円の売上規模でハイブリッドケーソンは釜石港湾口防波堤や衣浦港3号地廃棄物最終処理場護岸などを受注している。また鋼製ジャケットはこれまでに東京国際空港D滑走路や富山新港火力発電所LNG1号機桟橋、東京国際空港A滑走路保安施設用地などを、プレキャスト防潮堤は気仙沼港・大川防潮堤や女川原発防潮堤嵩上げ工事、浜岡原発の防波壁などを受注しており津製作所の機能をフルに生かしている」

――海外案件も積極的に受注しています。

 「これまでの大型案件はバングラデシュの『カチプール・メグナ・グムティ第2橋建設工事および既存橋改修事業』、スリランカの『ケラニ河新橋建設事業パッケージ1鋼製橋梁工区』が鋼重各1万8千トン、インドの貨物専用鉄道橋CTP3A(R)が5600トン、ミャンマーのティラワ経済特別区の鋼製ジャケット桟橋工事が4800トンなど。ODA案件を中心に受注を重ねており、案件の山谷はあるが少なくとも毎年この半分程度の受注ができればと思っている」

――産業機械分野については。

 「現状の売上高は400億円規模。鋼製サイロは東電・常陸那珂など約1800基の実績があり、バイオマス発電の需要増によってバイオマス燃料の貯蔵・運搬設備の需要は右肩上がりと想定される。2020年までに国内シェア5割の獲得を目指したい。また、クレーンは横浜港の国内最大のガントリークレーンを含め84基の実績があり、今後も需要は伸びそうだ。さらに、機械式立体駐輪場『サイクルツリー』の収容台数は累計2万台を超え、重量物自動倉庫も大井埠頭コンテナ立体格納庫など47プラントを納めている。一方、ガスエンジンはこれまで約300台、蒸気タービンは約200台、舶用ディーゼルエンジンは約500台の実績がある。稼働40年を超える蒸気タービン発電施設の更新需要は顕著で、蒸気タービン設備技術に加えプラントエンジニアリング技術を駆使しタービン事業を拡大していく。ジャパンマリンユナイテッドとコラボレーションしつつ舶用エンジンの拡販も図りたい」

――今後どのように事業を拡大しますか。

 「17年度の受注高は海外での受注伸長により1300億円規模となる見込みで、今後も同水準以上の受注を目指したい。国内新設橋梁の需要を捕捉するとともに伸長する改築工事の需要を確実に押さえていく。NEXCOや首都高、国による床版取替工事の発注が本格化しつつあり、改築関連の市場規模は拡大が見込まれる。ビジネスの中心と捉えており、これまで培った老朽化更新技術や大規模更新工事でのさまざまなノウハウを生かしたい。鉄構インフラ関連では外航クルーズの旅客拡大に向けた桟橋整備工事、既設桟橋や岸壁などの耐震補強、リニューアル事業の検討が本格化している。『深梁工法』や『がんばL工法』などの独自工法を提案していく。プレキャスト防潮堤は東北のみならず長周期地震対策が求められる首都圏や西日本などでも展開したい」

――海外については。

 「ODA案件を中心に経済発展が著しい環インド洋地域やアフリカなどの案件に注力していく。政府の〝質の高いインフラ輸出〟政策によって拡大が期待される鋼橋の海外市場に対応するため、ミャンマーの鋼構造合弁、J&Mスチールソリューションズと協同で対応していく。J&Mは現在第二次拡張の途上でビル鉄骨など製品のラインアップを拡充するとともに増産を図っている。拡張は今年4月には完了する見込みで生産能力は年間3万トンとなる。ベースとなる鋼橋のシェアは3~4割を占め、想定以上のスピードで所期の生産能力まで拡大できた。今後は鋼構造物の需要がどの程度出てくるかが焦点となるが、ミャンマーは年間約7%と高い経済成長率で鉄需拡大が見込まれる。ビル鉄骨需要も視野に入るほか、ODA案件などでJFEエンジからの製造委託も増えている。17年度の社会インフラ本部の海外受注高は370億円に拡大で、J&Mを軸にさらに受注に注力していく」

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