長崎市、MICE予算見送り 公会堂代替施設に影響 県庁舎跡地活用議論 足踏み

 長崎市が、JR長崎駅西側に計画するMICE(コンベンション)機能を中核とする複合施設の整備費について2018年度一般会計当初予算案への計上を見送ったことが、解体された同市公会堂の代替ホール整備の行方にも影響を及ぼしている。MICE整備予算が確保された段階で、県は市と共同で県庁舎跡地へのホール整備の検討に入る予定だったが、その「タイミングを失った」ためだ。予算計上には指名停止を受けて失格となった整備業者の代替業者を早急に決める必要があるが、現時点でめどは立っていない。

 19日、産学官のトップが長崎の経済浮揚策を議論した「長崎サミット」。当初のシナリオでは、長崎商工会議所の宮脇雅俊会頭が「市議会には(MICE関連の)議案が提出される。建設が確実になれば県庁舎跡地(活用)の議論も動きだす」と中村法道知事に水を向ける予定だった。しかし、その文言は削られた。

 県は県庁舎跡地活用策の一つにホール整備を挙げており、長崎市は14年6月の市議会で、公会堂の代替ホールを県と共同で整備できるよう協議していると説明。しかし県は17年2月、MICEで計画される平土間(ホール)との機能重複を懸念していったん判断を保留。田上富久市長は県庁舎跡地での早期整備は困難とし、現市庁舎を移転した跡に整備すると表明したが、「(県庁舎跡地も)余地があれば検討する」と含みを持たせた。

 その後、県はMICEの平土間が、県庁舎跡地に予定するホールと機能が異なるとして、MICE予算が確保されれば、市と共同でホール整備の検討に入る方針だった。しかし、予算計上が見送られたため、「知事が方針を示すタイミングが難しくなった」(県幹部)。ある市議は「県市でホールを造れば費用を分担できる。本来は一緒にやるべき事業だが、また足踏みする」と嘆く。

 MICE整備の優先交渉権者の企業グループ(14社)に入っていた大手ゼネコン鹿島は今年1月、労災死亡事故を起こし市から指名停止処分を受けて失格となった。企業グループ代表の九電工が代替業者を探しているが、他の構成企業との相性もあり、順調に決まるか不透明だ。また、リニア中央新幹線の工事を巡る談合事件で東京地検特捜部が大手ゼネコン4社を独禁法違反の疑いで捜査していることも不安材料。公取委などが関係業者を処分すれば「長崎市も指名停止を出すことになる。鹿島の二の舞いになるリスクもある」(市担当者)という。

 一方、公会堂で長年活動してきて、代替ホールの早期整備を求める市民は不満を募らせる。「かとうフィーリングアートバレエ」の加藤真知主宰(67)は「代替ホールの建設は公会堂の廃止前に決めておくべき話だ。行政はMICEの議論ばかりして市民の文化活動を軽く見ている。私たちはいつまで我慢すればいいのか」と批判している。

MICE機能を中核とする複合施設のイメージ図(右、長崎市提供)。市が整備費の予算計上を見送ったことで、県庁舎跡地(左)でのホール整備にも影響が及んでいる

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