愛知製鋼、「自動運転時代」見据え、新規ビジネス育成 「MIセンサ」活用、実用化にめど

 EV、AIの活用という自動車の大きな変化が着実に進む中で、愛知製鋼(社長・藤岡高広氏)が重要な要素技術を提供して育成する「自動運転システム」が、実用化に向けまた一歩駒を進めた。同社の超高感度磁気センサ「MIセンサ」を使った磁気マーカシステムによる実験が先週、長野県伊那市で行われ、同システムとして初めて運転者不在(レベル4)での自動走行に成功した。2020年の完全実用化に向け、機運はますます盛り上がりそうだ。

 今年度国土交通省が主催する実証実験は、高齢化が進む中山間地を中心に、より安全な人の移動と物流改善をテーマに全国13カ所で実施。様々な道路条件での走行、コストや地域への効果などを総合的に検証している。

 それに大きく貢献するのが、愛知製鋼の独自商品・超高感度MIセンサだ。

 磁気マーカを道路上に埋め込み、自動運転を支援するシステム。従来型の廉価な磁気マーカを使用することにより、敷設コストを抑え、GPSなどと比べ精度の高い自動運転を可能にする。

 今月10~16日に行われた実証実験では、地元住民がモニターとして実験車両のバスに乗車。長谷総合支所までの距離を往復する合計約5キロメートルの工程を「レベル2」(運転手が乗車するが、運転操作を行わない)で自動走行した。

 13日には、長野県伊那市の道の駅「南アルプスむら長谷」周辺400メートルの専用空間内で、200メートルの区間に低磁力フェライト磁気マーカ約200個を2メートル間隔(カーブ箇所には50センチメートル間隔)で敷設し、走行試験を行った。

 磁気マーカを設置した実験区間では車両が底部に取り付けたMIセンサモジュールがマーカの微弱な磁力をとらえ、GPSなど他機器も併用して位置や速度を適切にコントロール。道幅の狭い箇所やクランクでは徐行しながら、道路にレールが敷かれているように正確に走行した。

 磁気マーカシステムは夜間、悪天候でも安定的に自社位置を特定できる強みを持ち、降雪地でも高精度な自動運転を可能にする。国交省が推進する20年の実用化実現への大きなツールと言える。

 愛知製鋼は、路線バスといった地域限定の交通機関、自動搬送装置(AGV)などでの使用も想定し「今後実験を通じた実績を重ねて安全性をPRするとともに、実用化後にはトータルシステムとして供給できるよう体制を整えたい」(浅野弘明副社長)と意気込みを見せる。

 しかし、一般道へのマーカの敷設方法などの標準化は十分に進んでいない。また、同システムを採用した自動運転実現に向けて解消すべき課題も少なくはない。さらに研究開発、実験を産学官連携で行い、より安全で優れた自動運転システムの確立に向けた取り組みに力が入りそうだ。

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