金属行人(2月21日付)

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 安価な鋼材やアルミ製品の大量流入によって自国の鉄鋼メーカーやアルミメーカーが疲弊する。素材メーカーの存続が危ぶまれる事態は安全保障上の危機である▼こんな論法で、米国のトランプ政権が、通商法232条の発動をちらつかせている。先週末には商務相が1月中旬に大統領に提出した報告書が公表された。鉄鋼製品の場合、すべての輸入品を対象に数量制限、上乗せ関税を課すという内容だ▼米商務長官のロス氏は2000年代前半、投資ファンドを立ち上げ、倒産した鉄鋼メーカーを次々と買い取ったことで知られる。最終的にはその資産を他の鉄鋼メーカーに転売した。米鉄鋼業界とは少なからぬ因縁のある人物だ▼輸入鋼材によって自国鉄鋼市場が破壊されていると訴えるロス氏。伝えられる発言からは、232条に反対する米鉄鋼ユーザーの声や、自由貿易の精神はうかがえない。『米・鉄鋼業ファースト』ということなのだろうか▼ロス氏が投げたボールは今、トランプ大統領の手の中にある。大統領がどう判断するのかは予断を許さないが、間違いなく言えるのは、『発動』は報復の連鎖を引き起こしかねないということだ。鉄鋼貿易の発展を支えてきた「自由貿易」は今、危機に瀕している。