Jクラブの未来もここにあり?セレッソの人気オーディションに潜入取材してみた!

「選手や監督ではない、自クラブの広告塔を生み出す!」

近年、Jリーグのクラブが積極的に取り組む施策の一つである。

彼らの王道プロモーションと言えば、選手や監督などが表に立ち、情報発信やイベント参加を様々なフィールドで行うことだった。

しかし、それには限界があることをクラブ側も早々に気が付いた。

あくまでも選手たちの試合が主戦場であり、ピッチ外での活動はオプション。時間的な制約も当然のように多く、例えば、試合当日に試合そっちのけでプロモーション役を担うようなことは無理難題だ。

しかし、クラブとしては、これらプロモーションの方針を変えるわけにはいかず、試合日前後に注力する流れは変わらない。盛り上がりのタイミングにアクセルをかけることは、クラブ広報の考えとしては当然だ。

となると、「選手や監督に代わる誰かを探さなくてはならない」という課題に直面するのだが、そこで多くのクラブが導き出した答えが「クラブ外での広告塔の確立」である。

言わば、既に知名度のある、または引きが強いタレントを起用し、別角度からプロモーションを行う手法だ。

(クラブのものではないが)「Jリーグ女子マネージャー」などはその最たる例と言えるだろう。

そして、この流れは形を変えて、各クラブは進化系を創出した。「クラブ公式応援タレント」などのようにクラブと密な距離感を保つ存在の登場だ。

冒頭で「自クラブの広告塔を生み出す」と綴ったが、要はクラブが「自分たちクラブの意思や希望を反映したタレントを作っていこう」という答えに行き着いたということである。

この取り組みは各クラブが継続的に行ってきたが、その結果として、すっかりサポーターにはお馴染みとなったタレントたちも誕生。

「気が付いたら、クラブだけではなく、そのタレントたちのことも応援してしまっていた」というサポーターも続々と現れた。

しかし、それでもサポーターたちが知り得ない疑問は存在するはずだろう。

それは「どのような過程を辿り、彼女(or彼ら)たちが誕生するのか」という点だ。

そこでその疑問点を解決するために、セレッソ大阪と関西コレクションエンターテイメントの協力の下、「応援ナビゲーター第二期生」のオーディションに潜入取材してみることにした。

応援ナビゲーターとは?

そもそもの話になるが、「応援ナビゲーター」とは何なのだろうか。

端的に紹介すると、セレッソ大阪のホームゲーム開催時にスタジアムに登場して、サポーターたちと試合を盛り上げる。または、試合外でも自身のSNSなどを用いてクラブのPRに貢献する存在である。

一度でもセレッソ大阪の試合を観戦に訪れたものであれば、彼女たちのことは目にしたことがあるはずだ。

当初は「セレッソ大阪をPRする女の子を発掘する」という、同クラブを応援する商店街のある企画からスタートしたものだが、今やこのクラブの看板の一つになりつつある。

気になる選考基準は?

「一体どのようなポイントを見て合格者を決めるのだろうか…」

どのオーディションでも必ず合格者と不合格者に分かれるものだ。しかし、その差はどこにあるのだろうか。

その素朴な疑問をオーディションの審査員として参加されていたクラブ関係者の方にぶつけてみたところ、「これが正解とかはないですが…」という前置きをしつつも、ある答えを返してくれた。

「やはり、コミュニケーション能力の資質は見てしまいますね。セレッソ大阪の応援ナビゲーターは、スタジアム外でのPR活動もあり、サッカーファンだけではなく子供たちなどとも交流する機会があります。なので、老若男女問わずにコミュニケーション能力を取れる人は有難いです」

また、続いて「なるほど!」と感じさせれられたのが、臨機応変に対応できるアドリブ能力の重要性であった。

「たとえば、ただ与えられた台本を読むのではなく、そこにアレンジを加えてくれてくれるような人のほうが嬉しいです。また、現場仕事では全てがシナリオ通りに進むとは限りません。なので、タイムスケジュールに狂いが生じたり、必要なコメントが急遽変更されることもあります。それでも、動じることなくスムーズにこなしてくれるとこちらも助かります」

実際、今回のオーディションでも突如として「何か一発芸はありますか?」と振ってみたり、「今季のセレッソのユニフォームを今から宣伝してみてください」と投げてみたりと、いかにも大阪のクラブらしい“無茶振り”も度々見られたが、その理由もこの選考基準がベースになっているからなののだろう。

もし、「いつか私もセレッソ大阪応援ナビゲーターに」という意思があるようならば、「コミュニケーション能力」と「アドリブ能力」は磨いておいて損はないかもしれない。

どんな人が受けるの?

正直、この手のオーディションは、既にタレント活動を行っているプロであったり、タレント予備軍が受けるものではないのか、という先入観があったが、それもこの潜入取材で見事に裏切られた。

とにもかくにも、バックグランドは応募者各々で異なり、志望動機も「十人十色」なのである。

もちろん、この日のために小道具まで用意してくる「熟練組」の顔も見られたが、一方で多く見られたのが正真正銘の「ビギナー組」であった。

「現在はフリーターなので、応援ナビゲーターの専念できます」と意気込む者であったり、「銀行に勤務していますが、その仕事を辞めて来ようと思っています」や「関東在住で保育士をしていますが、セレッソ大阪が好きなので受かれば大阪に移住します」と周囲をザワつかせる強者の応募もあった。

さすがに選考側もこのようなケースは想定していなかったようで、「これはどうしよう…」と頭を悩ませる一幕もあった。

タレントの登竜門の一つに?

現状は、オーディションに受かったとてクラブでの活動に制限され、そこからタレントとして花を開かせるには長き道のりがある。

しかし、このような取り組みを各クラブが力を注いでいるのは事実であり、その知名度や認知度も向上の一途。

今後、さらなる進化が期待できる企画の一つであることは間違いないだろう。

「実は私…元々はJクラブで応援ナビゲーターをやっていたんです!」という自己アピールするタレントが世に続出した時、おそらく、「Jリーグと日本人の関係性」もまた違ったものになっているかもしれない。

※一部、敬称略

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