車での外出、本当に必要だったか

©株式会社福井新聞社

ニュースの新習慣 福井新聞D刊

「福井新聞D刊」は、好みに応じてお使いいただけるサービスをまとめてご覧いただけるデジタル新聞です。福井のニュースをより深くより広くお届けします。

お申し込みはこちらから
買ってきた灯油や食料品をそりに載せ、自宅まで運ぶスキーウエア姿の男性=8日、福井県坂井市春江町田端
道路脇の雪で通常4車線が2車線になり渋滞した県道(通称・芦原街道)=13日午前8時5分ごろ、福井市新田塚1丁目から

 「その外出、本当に必要ですか? 歩いて行く手段はありませんか?」。会員制交流サイト(SNS)に11日、福井県坂井市の美容室経営、山口貴史さん(37)がメッセージを載せた。車での不要不急の外出を控えてほしいとの呼び掛けは記録的な大雪となって以降、福井県や福井市なども行ってきた。しかし現実には「近くのスーパーに行くだけなのに、スタックして渋滞を引き起こしている車が多くあった」と山口さん。「どうしても訴えたくて書いた」と振り返る。

 今回の大雪による混乱で、状況が三八豪雪の1963年、五六豪雪の81年と大きく異なるのは、車社会の進展だ。国土交通省中部運輸局福井運輸支局によると、県内の自動車の保有台数は63年3月末に3万5634台だったのが、81年3月末に32万1856台、2017年3月末には66万3615台と飛躍的に増えた。

 通勤や買い物、家族の送り迎えなど日々、幅広い世代が車で動くのが当たり前となっている県内。晴れ間が出た9日や3連休明けの13日などは交通量が一気に増え、各地で渋滞が発生した。県警交通管制センターによると、福井市の通称・フェニックス通りは9日、10時間にわたって渋滞が続いた。

 「五六豪雪のころ、県民はもっと歩いた」と指摘するのは建設業のエス・イ・コンサル(福井市)の森國茂治社長。雪で車が出せないなら、かなり早起きして徒歩で通勤したり、そりを引いて買い物に行ったりしたという。今回も、購入した灯油や食料品をそりで運ぶ人は見られたが、今では珍しい光景に映った。

 中には車で出掛けざるを得ない人もおり、山口さんが「批判は覚悟の上だった」というメッセージ。実際には賛同の声が相次いで寄せられた。山口さんは「スタックして身動きがとれなくなったせいで救急車が通れず、人命救助が間に合わなかったら…。みんな簡単に車を選択しすぎなのでは。必要最低限に抑えることや、我慢することを改めて問い直すべきでは」と問題提起した。

 トラックが雪道で動けなくなり、道路をふさいで渋滞を引き起こす―。今回の大雪では、そんな場面を県内各地で目にした。「渋滞すれば迷惑を掛けるし、除雪作業の妨げにもなる。そもそも雪道の運転は危ない。リスクが高いことは分かっているので、雪道にはトラックを出したくないのが本音だ」。北陸トラック運送(福井市)の水島正芳社長はきっぱり語る。

 だが、出したくなくても荷主から要請があれば出さざるを得ない。「災害時であっても『×日に届ける約束だろう』と譲らない荷主もいる」と水島社長。幹線道路の通行止めが相次いだ中、同社のドライバーには富山県から帰ってくるのに40時間かかったり、家を数日空けていた間に車庫がつぶれてしまったりした人もいるという。

 「運送事業者はどうしても荷主より立場が弱い。ドライバーの過重労働問題などもある中、経営者は厳しい判断を迫られている」と県トラック協会の中山武専務理事は実情を話す。

 不要不急の外出を控えるべきなのはトラックも同様ではないか―。荷主にも顧客にモノを届ける社会的使命があることは理解しつつ、水島社長は「非常時には行政が指揮を執り、緊急性の高い物流以外は止める判断も必要ではないか。優先順位を有識者で話し合っておくなど対応をお願いしたい」と提言した。

あなたにおすすめ