ボーダフォンが世界初のドローン安全技術の試験を開始 2018年2月20日。ボーダフォングループは、世界初となる航空管制用ドローン追跡と安全技術の試験を開始すると発表した。同社の取り組みは、4Gネットワークと IoT技術を活用して、壊滅的な事故から航空機を保護し、ドローンの犯罪を抑止する。

レーダーで追跡できないドローンを4G通信技術で追尾する

 ドローンの飛行性能が高度になるほど、麻薬などの密輸やテロに使われる可能性が増し、航空機との衝突の危険性も拡大している。しかし、ドローンを従来のレーダーで追跡するのは困難。2050年までに人口密度の高い地域で年間に2,500万時間の飛行が予測(*1)されているドローンは、安全な飛行に向けた技術開発と航空管制システムの対応が急務となっている。
 世界26ヶ国でモバイル事業を展開するボーダフォングループでは、ドローンの安全な飛行をサポートするために、無線測位システム(RPS)を開発した。RPSは、ドローンに埋め込んだ4GモデムとSIMを使用して、リアルタイムでドローンを追跡する技術。個々のドローンをSIMベースで認識し、所有者を照合する。そしてドローンの操縦者と航空管制官を認可する機関において、最大50メートルの精度で機体をリアルタイムに追跡する。もしも、操縦者が機体を見失ったり、飛行禁止空域への侵入などのリスクが発生したときには、ジオフェンシング機能により、自動的に着陸させるか、操縦者に警告を発信する。さらに、ドローンの飛行経路を変更したり着陸させるために、操縦者の制御を無効にして、管理機関が強制的に緊急介入できる遠隔制御システムも提供する。

RPSではリアルタイムにドローンの位置や速度をモニタする。 画像はVodafone Global Security Operation Centerのイメージ。

GPSよりも信頼性の高いRPSの位置データを活用

 ボーダフォンが開発したRPSの位置データは、GPS位置データよりもハッキングやスプーフィング(なりすまし)を行うのがはるかに難しい。RPSで利用する4Gモバイルネットワークは、SIMから基地局への無線によるエンドツーエンドの強力な暗号化を含む、長年確立された実績のあるセキュリティ通信システム。ドローンを制御するプロトコルと比較しても信頼性が高い。RPSでは、AIを活用して多数のドローンを遠隔から追跡して制御する。同社は、世界中のドローンの安全性の向上と位置情報の技術革新を加速するために、RPSの研究と関連する知的財産をパブリックドメインに配置し、再使用のためのライセンス料をかけない。
 2017年に行われた実証実験では、4Gネットワークを使用して、スペインの32kmの飛行コースで固定翼型ドローンにより、速度とRPS位置にGPS座標やHD動画などをリアルタイムで受信した。今後は、2019年を目標にRPS技術の試験をスペインとドイツで計画している。同社によれば、RPS技術は多様なIoTデバイスへの搭載が可能で、GPSの届かない屋内でも利用でき、各種のセキュリティ向上に活用できるという。
 ボーダフォングループ最高技術責任者(CTO)のヨハン・ウィーバー(Johan Wibergh)氏は「ボーダフォンの画期的な技術革新は、世界中でドローンが安全に飛行して、ユビキタスに活躍できる時代をサポートします」と話す。また欧州委員会のMatthew Baldwin副長官は「欧州委員会は、EUにおける安全な商業飛行のためのU空間ビジョンの実現を目指す試験を支援しています。私たちは、ボーダフォンの研究の成果に期待しています」と述べる。さらにEASA(欧州航空安全機関)のフライトスタンダードディレクターのイヴ・モリエ氏は「安全で責任あるドローンの使用を確保するための新しいアプローチの開発に、ボーダフォンが力を入れていることを歓迎します」と語った。

*1 SESAR(Single European Sky Air Traffic Management Research)プロジェクトの分析による

4Gモバイルネットワーク基地局

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