「ヘイト 刑事規制を」条例へ意見書案発表

【時代の正体取材班=石橋 学】反人種差別運動に取り組む市民団体「『ヘイトスピーチを許さない』かわさき市民ネットワーク」は22日、実効性のある人種差別撤廃条例の制定を求める意見書案を発表した。差別を禁止し、ヘイトスピーチを刑事罰で規制する先進的な内容となっている。  この日、川崎市内で開催した集会の参加者から出た意見も踏まえ、3月1日、福田紀彦市長と松原成文市議会議長宛てに「市民の総意」(三浦知人事務局長)として提出する。

 市内では2013年から昨年7月まで14回ものヘイトデモが繰り返され、人種差別団体による集会も開かれている。意見書案では、「差別を生みだす土壌をなくさなければヘイトスピーチの根絶は不可能」と提起。入居や就職、教育、行政サービスなどにわたる差別全般を禁止する条例を求めている。

 ヘイトスピーチには禁止規定を設けた上で、実効性を担保するために罰則を設けるべきとする。なかでも「殺せ」といった危害を告知し犯罪を扇動する、より悪質なものは刑事罰をもって規制する必要性を説いている。

 このほか、差別書き込みをモニタリングし削除要請を行うなどのインターネット対策▽人権尊重教育の推進▽被害相談・救済機関の設置▽実態調査の実施−などを盛り込んだ。ヘイトスピーチ問題に詳しい師岡康子弁護士は意見書案について「差別を刑事規制する条例は前例がない。差別を止める力を持つ条例が作られる意義は大きく、実現すれば全国のモデルになる」と評した。

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