【高炉の業績動向】〈神戸製鋼所・梅原尚人副社長に聞く〉鉄鋼需要好調続く「確実に稼ぐ体質に」 建機の販売増が収益押し上げ

成長・財務戦略「計画通り進行」

――2018年3月期の連結経常利益見通しは600億円。前回(10月)見通しから100億円上方修正した。

 「状況は10月と大きく変わっていないが、建設機械の中国での販売台数が想定を大きく上回る見込みとなったことが上方修正の最大の要因。中国では昨年10月の共産党大会以降も、インフラ投資の活発化などを背景に建機需要が想定よりも好調に推移している。買い替え需要も旺盛で、建機の経常損益は17年3月期の赤字から、180億円の黒字に転じる見込みだ」

神戸製鋼所・梅原副社長

 「鉄鋼の修正幅はプラス10億円。前回見通しと大きな差異はない。需要環境は引き続き好調に推移している。それに加え、主原料価格の上昇に伴い在庫評価影響が好転しており、原料コストの上昇でメタルスプレッドが一時的に悪化するリスクを織り込んだものの、利益見通しを若干押し上げる形となった」

――アルミ・銅は80億円と20億円の下方修正。品質問題による影響があったのか。

 「前の期に比べ40億円の減益となる。経常利益見通し80億円のうち在庫評価益で55億円、一過性要因を除いた実力ベースの経常利益水準は25億円となる」

 「アルミ・銅事業における品質問題による減益は40億円を見込んでいる。このうち約20億円が技術検証費用や部品取り換え費用の弁済。残りは生産減や歩留まり悪化による減益で、一定の想定を基に織り込んだ」

――現行中期経営計画(16~20年度)の2年目が間もなく終わる。進捗は。

 「成長戦略では、自動車の軽量化ニーズに対応した複数のプロジェクトを進めているが、いずれも順調だ。アルミでは韓国のアルミ圧延、中国・天津の自動車アルミパネル材、米国のアルミ鍛造、真岡製造所の焼鈍・表面処理などの設備増強と、主に四つのプロジェクトを推進しているが、それぞれ予定通りの進捗。鉄鋼では、中国・鞍鋼との冷延ハイテン合弁が順調に立ち上がった。米USスチールとの合弁会社、プロテック社のCGL(溶融亜鉛めっきライン)プロジェクトは予定通り来年7月に稼働を開始できる見込み。成長戦略として5年間で1千億円規模の投資を計画しており、その方針に変更はない。引き続き各プロジェクトの立ち上げに注力していきたい」

――加古川製鉄所への上工程集約が昨年10月末に完了した。

 「連続鋳造機の稼働を先行させたことにより、認証取得が順調に進んだ。綿密な計画に基づき技術的な課題をクリアできており、17年度で65億円の増益効果を見込んでいる。集約による効果がフルに効いてくる18年度は、150億円の利益押し上げ効果を見込んでいる」

――財務戦略では、成長投資に向けた資金として、1千億円規模の資金捻出を掲げた。現在の進捗状況は。

 「資産売却や、海外拠点を中心としたCMS(資金の一元管理)を通じての運転資金効率化などにより、最大1千億円規模の資金を捻出する計画。16年度は運転資金改善等で220億円、17年度は株式売却などを含め150億円を捻出した。中計期間は残り3年だが、計画通り進んでいる」

――18年度の経営環境をどのようにみているのか。

 「これから予算を詰めていくが、現時点の感触では、鉄鋼を中心に好環境が継続するとみている。これに加え、加古川製鉄所の上工程集約などでコスト削減計画も一定の成果を上げられるだろう。成長プロジェクトの立ち上げに注力しつつ確実に利益を稼ぐ体質にもっていけるかどうかが課題となる」

 「18年度は、品質問題によって失墜した信頼の回復も大きな課題となる。『二度と起こさない』仕組みを作り、全社を挙げて取り組みたい。検査工程の自動化、製品の品質を一定化するための設備導入といったハード面の対策のほか、品質マネジメント、ガバナンス、生産技術向上といったソフト面での対策も徹底したい。信頼回復は全てに優先する課題と考えている」(高田 潤)

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