【慶大×田村市】慶大、田村市で農業利用も展開 生産者交じえ意見交換会  慶應義塾大学とドローンに関する包括的な連携協定を締結している福島県田村市は2月22日、農業従事者を交じえドローンの農業活用を実践するための「意見交換会」を開いた。今後1年間はドローンを活用するために必要な情報収集や観察にあて、2019年度をめどに生産者の負担軽減、品質向上、信頼性確保などで付加価値向上に役立てていく。

可視・近赤外の画像、軽トラドローンポートなど紹介 生産者も負担軽減など期待

 意見交換会は「グリーンパーク都路におけるドローンを活用したアグリセンシング研究開発事業に係る第2回意見交換会」で、開催は1月15日に続いて2度目だ。慶應義塾大学ドローン社会共創コンソーシアムの南政樹副代表、田村市でドローン活用を進めている株式会社糺の森(東京)、田村市の関係部局の職員、生産農家、JAの担当者ら出席。システム開発サービスを展開するこまくさネットサービス(東京)の廣瀬幸義取締役、ドローン関連製品の開発、製造、販売を手掛けるTEAD(テッド)株式会社(群馬県高崎市)の市川王崇営業戦略室室長も加わった。
 意見交換会では、農業にドローンを活用する視点として、農薬散布、圃場観察、防除、運搬などが考えられることや、それぞれでの活用事例が紹介された。その活用のひとつとして、植物の生育状況を可視・近赤外の画像を撮影できるカメラをドローンに搭載する事例などが紹介された。
 ドローン社会共創コンソーシアムの南政樹副代表は、軽トラックに積めるドローンの離発着基地(ドローンポート)を試作したことを報告。「現在は一部手動で運用している。導入するさいには自動離発着を目指す」などと今後の抱負を述べた。このほか、ドローンの農業活用をすすめるうえで欠かせない自動航行に関する国のルールづくりの動向についても言及があり、それをふまえて検討が進めることなどを確認した。
 このほか、圃場管理システム活用の可能性や、ハウス内でのドローンでの監視の有効性、ドローンでは農薬が適切に散布されるためドローンから地表に向けて吹き下ろすダウンウォッシュと呼ばれる風の重要性、大豆など品目ごとに農薬の扱い方を検討することの必要性などが示された。
 生産者からは、「運搬が実用できれば、負担が大きく減る期待がある。見守りに活用できれば、梅雨明けの暑くなる繊細な時期に作業効率化の効果が見込める」などと期待が表明され、今後、実用化に向けた検討をさらに進めることになった。
 慶大は田村市とドローンの活用について、2016年12月に包括提携を締結しており、これまでに、高校生向けに特別講座を軸とした人材育成を中心に事業を進め、実績を上げてきた。現在、ドローン活用の拡大を進めており、農業では市内の農業体験施設、「グリーンパーク」で、ビールの原料となるホップの生産などで、ドローンを活用する事業を進める。2018年は、運用のための情報収集を集中的に進める方針だ。

ドローンの農業利用について意見を効果する「意見交換会」出席者
意見交換会は福島県田村市役所で開催された
慶大コンソが田村市で展開するドローンの農業展開で活動拠点となる予定の「グリーンパーク都路」

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