多様な生き方、虫に学べ 絵本作家舘野さん講演

 秦野市在住の絵本作家・舘野鴻さん(49)の作品を通じ、生き方や多様性について考える人権教育研修会が24日、二宮町二宮の町生涯学習センターラディアンで開かれた。虫の生態調査の傍ら、生物画を描く舘野さんが講演。独特な視点に、参加した約40人が関心を寄せた。

 町教育委員会の主催。横浜市生まれの舘野さんは、母親が絵画を習っていた関係で、昆虫の細密画で知られる故・熊田千佳慕氏に幼少期から教えを受けた。1996年から秦野を拠点に、児童書の生物画や絵本の制作に取り組んでいる。

 「読み手は大人を想定し、生き物の事象をどう捉えるかを投げ掛けている」と舘野さん。作品「つちはんみょう」では、瑠璃色の有毒昆虫・ツチハンミョウが、厳しい生存競争や環境を乗り越えて子孫を残し続けている現実を紹介。「ハナバチの巣に寄生し、その幼虫を餌にする以外、成長の手段を持たない」などと説明し、「ツチハンミョウは、人にとっては気味の悪い存在かもしれないが、こうした背景を知ることで見方が変わる」と指摘した。

 その上で、「絵を描くときも生き物を知り、四方から観察することが大事。それでも分からないことの方が多いが、グロテスクな昆虫が美しくも見えてくる」と話した。

 そして「物の見方は最初に抱く固定観念や印象で決まるが、一歩歩み寄って理解しようとすることで全く違う認識が生まれる。人に対してもコミュニケーションを重ね、理解しようと努めるアクションが必要ではないか」と訴えた。

 昆虫好きな2人の息子と参加した、小田原市の本間麻希さん(39)は「気味が悪いと思っていた虫にもストーリーがあることが分かった。先入観でなく相手に寄り添う姿勢が必要だと感じた」と話した。

© 株式会社神奈川新聞社