諫干請求異議控訴審、和解協議再開か 福岡高裁の出方が焦点

 国営諫早湾干拓事業を巡り、2010年の開門確定判決を履行せず制裁金を科された国が、開門を強制しないよう求めた請求異議訴訟の控訴審が26日、福岡高裁で開かれる。国と開門派はいずれも和解協議再開を求めており、今回で結審する見通し。再開の場合は双方の隔たりが大きい開門の是非を巡って、どのような形の和解を促すのか、高裁側の出方が焦点となる。

 国は10年の確定判決に基づく期限の13年12月までに開門せず、不履行に対する制裁金を支払い続けている。請求異議訴訟は、この支払いを拒むため14年1月、国が佐賀地裁に提訴。国は地元の反対など「開門できない事情」を訴えたが、同地裁は同12月に訴えを棄却。国の控訴後、福岡高裁は15年10月に最初の和解勧告をした。

 開門反対派が長崎地裁に訴えた開門差し止め訴訟でも16年1月に和解協議が始まり、国は100億円の漁業振興基金創設を提案。しかし17年3月に決裂したため、推移を見ていた同高裁も同5月に協議を打ち切って弁論を再開した。

 長崎地裁は同4月の判決で開門差し止めを命令。「開門せず基金による和解を目指す」として控訴しなかった国は、同高裁の弁論再開後、「確定判決原告である漁業者の共同漁業権は消滅した」と主張するなど非開門の立場に転換している。今年に入り、基金案に反対の佐賀県有明海漁協に賛同を働き掛けるなど、再開後の協議を有利に運ぶためとみられる動きも強めた。

 これに対し、開門派弁護団は1月、開門した上で漁業者と農業者が共存できる基金の創設を求めた和解勧告案を同高裁に提出。国が同漁協に基金案に賛同するよう「“脅し”をかけている」と反発している。

 26日を前に、開門派弁護団の堀良一事務局長は「“ご破算”になった(国の)基金案を和解協議の対象にするのはふさわしくない」とし、開門派の提案が妥当と強調。国は「開門で漁業環境が改善する見込みはない」と、漁業振興基金による和解を促す構え。開門反対派は従来同様「『開門しない』前提の和解協議なら参加する」との考えだ。

 一方、長崎地裁の開門差し止め命令に控訴しなかった国に代わって訴訟を続けるため、開門派が申し立てた独立当事者参加の可否判断を同高裁がいつ下すかも注目されるが、まだ時間がかかるとの見方が強い。開門派弁護団によると、参加の可否は期日を指定して「判決」の形で言い渡される。26日が指定されることもあり得たが、現時点で期日は決まっていない。

© 株式会社長崎新聞社