NEDOと鉄連、「コース50」プロジェクトで水素還元製鉄の基盤技術確立にめど

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と日本鉄鋼連盟は23日、二酸化炭素(CO2)排出量を抜本的に削減できる製鉄プロセス技術開発を目指す官民プロジェクト「COURSE(コース)50」で、製鉄プロセスのCO2排出を約30%減らす基盤技術の確立にめどをつけたと発表した。開発技術となる水素還元製鉄などについて試験高炉を活用した検証試験を完了し、CO2排出削減効果を確かめた。コース50では、鉄鉱石の還元に水素を活用する技術と、高炉ガス(BFG)からCO2を回収する技術の確立を目指している。2008年度からスタートした第1フェーズは今年度で10年間の研究期間を終える。

 第1フェーズでは、新日鉄住金君津製鉄所(千葉県君津市)に建設した炉容積12立方メートルの試験高炉を活用し、水素系ガスを用いた試験操業を4回実施。試験高炉と、試験高炉から生じたBFGからCO2を分離・回収する装置「CAT30」とを連動運転させてCO2削減効果を総合評価した。

 23日に会見したコース50の荒木恭一プロジェクトリーダー(PL、新日鉄住金製銑技術部長)は水素還元製鉄の技術開発について試験高炉で約10%のCO2排出削減を検証したことを説明。その上で「試験高炉では効果を確かめたが、規模の異なる通常の5千立方メートル級の高炉に適用するにはまだ確認すべきことが多い」と述べ、2030年を目標とする実用化に向けて今後、スケールアップのための技術開発に取り組む姿勢を示した。

 会見には長谷和邦副PL(JFEスチール技術企画部企画グループリーダー)、NEDOの坂内俊洋環境部長、在間信之環境部統括研究員も出席した。

 コース50は来年度から8年間の第2フェーズが始まる予定。第2フェーズでは試験高炉で得られたシミュレーション技術を一段と深化させる。また、実施場所などは未定だが、既存高炉に改造を加えて還元に水素を利用し、実用化に向けた課題の抽出などに取り組む予定。これまでのシミュレーションでは、開発技術を既存高炉に適用する場合、銑鉄1トンの生産に必要なコークス量を示す操業指標「塊コークス比」を通常の350~400キログラムから250~300キログラムに引き下げるのが最適との結果が得られているという。こうした操業条件を既存高炉でも検証していく方針だ。

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