新日鉄住金など3者、材料欠陥を容易に特定できる次世代解析手法開発 応用数学を活用、焼結鉱でまず成果

 新日鉄住金など3者は26日、材料中の欠陥の場所を容易に特定できる次世代の解析手法を開発したと発表した。材料組織の形状を数値化し、応用数学を駆使して欠陥を割り出すことに成功した。これまで不可欠だった研究者の経験や予備知識に頼ることなく欠陥の特定が可能になる。サンプルに用いた高炉原料の焼結鉱の品質改善をはじめ、幅広い材料の開発や改良を導く新手法になると期待される。

 新高エネルギー加速器研究機構(KEK)の木村正雄教授、東北大の大林一平助教、新日鉄住金の先端技術研究所の村尾玲子主任研究員らの研究グループの成果。科学誌「ネイチャー」のネイチャーパブリッシング・グループが発行した23日付の電子ジャーナル「Scientific Reports」に掲載された。約3年かけて開発に成功。計測と応用数学を組み合わせた材料欠陥の特定手法は世界初という。

 研究グループがサンプルに用いたのは焼結鉱。焼結鉱は粉鉱石などを焼き固めてつくる高炉原料。不均質で複雑な微細組織を持ち、この組織の欠陥が強度や高炉内での被還元性などを左右する。

 研究グループはまず、材料中の組織が不均一に変化していく様子を三次元観察できる「放射光X線吸収微細構造法」と呼ぶ解析技術を確立。同技術により還元反応中の焼結鉱の鉄原子の価数や近接する原子の数、距離などがどう変わるかを観察した。この結果、三つの化学状態が複雑に不均一に混じりつつ反応が進行することを明らかにした。

 さらに研究グループは、この観察で得られた焼結鉱中の穴の形や大きさ、分布に着目。これらを数値化した上で、応用数学の手法の一つとなる「パーシステントホモロジー」を活用して解析した。

 この結果、焼結鉱の劣化の起点となる4種類の形状を特定した。このうち2種類は、これまでの研究では予想されていなかったタイプ。従来の研究理論や経験に頼ることない開発手法の有用性が確認された格好だ。

 研究グループは、焼結鉱のき裂発生メカニズムを解明することで、焼結鉱の強度向上や粉化を抑えるための指針が得られるとみている。焼結鉱の歩留り向上や高炉操業の安定化につながることになる。

 機械学習や人工知能(AI)を用いた材料開発を支える手法の一つになることも期待される。 新日鉄住金など3者は26日、材料中の欠陥の場所を容易に特定できる次世代の解析手法を開発したと発表した。材料組織の形状を数値化し、応用数学を駆使して欠陥を割り出すことに成功した。これまで不可欠だった研究者の経験や予備知識に頼ることなく欠陥の特定が可能になる。サンプルに用いた高炉原料の焼結鉱の品質改善をはじめ、幅広い材料の開発や改良を導く新手法になると期待される。

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