《東京#CODE》#Time's Up Now セクハラ問題の先に

illustration: Shogo Sekine

 1月に開催されたゴールデングローブ賞のレッドカーペットは今までとは全く違う光景でした。いつもなら華やかな色のドレスにため息をついたり、噂話でいっぱいになる夢の舞台。そこが今年は黒のドレスで埋めつくされました。黒のタキシードの男性がつけていたバッジには、「Time’s UP」と書かれています。Time’s Up=もう終わりにしよう、という意味ですね。エマ・ワトソンやナタリー・ポートマン、ニコール・キッドマンなどの女優たちが黒のドレスを着て、セクハラや差別が終わらないことへの抗議を示しました。

 ちなみにこの日、各ブランドは大慌てで黒のドレスを用意しました。ヴァレンティノはケイト・ハドソン、クロエはイザベル・ユぺール、グッチはマーゴット・ロビーやダコタ・ジョンソン、ドルチェ&ガッバーナはサラ・ジェシカ・パーカーなど。通常なら、数ヶ月前からセレブが着用するドレスは決まっているものですが、今回は急遽、黒に変更になったようです。

 「私にとって、黒いドレスを着ることは一つになることです。連帯であり、女性たちがコミュニケーションし、互いに励まし合った結果生まれたものです」と語ったのはエマ・ワトソン。その賛同者は300人を超え、ジャスティン・ティンバーレイク、Netflixドラマ「Stranger Things」のメンバーなど、男性たちも黒のタキシードに先ほどのバッジをつけて登場しました。アメリカのすごさは、こういう運動を世界中に大きく広げる力を持っていることです。同時にインスタも@timesupnowのアカウントが開かれ、その最初のポストは「沈黙を破ろう、待つことをやめよう、差別、ハラスメント、暴行を容認するのもやめよう」というメッセージ。

 ハリウッドから始まった、#MeTooのムーブメントでいろんな人がセクハラ被害について声をあげました。しかし、声をあげたあとには、反発や訴訟が待っています。たとえば昨年話題になった伊藤詩織さんの件も、彼女が当局に負けずに声をあげ続けることに、反発も凄まじいものでした。一人で戦うのには相当の覚悟と裁判の費用がかかります。

 そういう人を救うために「Time’s Up Now」は1300万ドルもの寄付を集めました。声を上げた人を孤立させずに、金銭的にも支援し、「男性だけによる頑強な支配はもう終わらせる(Time’s Up)ときである」と訴えています。

 日本でもコラムニスト・作家のはあちゅうさんが#MeTooで声をあげましたが、その後の彼女へのバッシングはあまりにひどかった。彼女に続く女性が出にくくなったのも、炎上への恐怖があるのだと思います。

 今回のゴールデングローブ賞で黒人女性として初めて生涯功労賞を受賞したオプラ・ウィンフリーのスピーチは、まさにその恐怖を打ち砕くに十分なものでした。「私たちには明るい朝を願い続ける力があります。少女たちに知っておいてもらいたいのです。新しい日々は、もう地平線のすぐそばまで来ているのだと!」。もう二度と「MeToo」と言わなくてもいい時代へ。女性だけじゃなく男性もLGBTの人たちも、差別や性的被害に終わりを告げるとき。まずは声をあげましょう。そして恐れないこと。それが生きやすい時代をつくるのだと信じています。

THIS MONTH'S CODE

#ゴールデングローブ賞

アカデミー賞の前哨戦といわれるだけに注目が集まるアワード。今回、監督賞のノミネートは全員男性。プレゼンターのナタリー・ポートマンは「全員男性だけど」と皮肉っていた。

#@timesupnow

その後も各界に運動が広がり、マドンナやレディ・ガガなども声をあげている。

#オプラ・ウィンフリー

女優、名司会者としてだけでなく、最近は次期大統領候補ともいわれている。

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