松坂復活へ期待ジワリ 好投に見る37歳右腕の“本当の武器”

中日・松坂大輔【写真:荒川祐史】

新天地・中日で期待高まる松坂大輔、150キロ超の剛球なしでも復活可能か

 期待が膨らんできた。ひょっとすれば、ひょっとするのでは……。本当に復活出来るのではないのか。そんな想いが、ジワジワと沸いてきた。 

 2月26日。沖縄の北谷公園野球場で行われた中日と、韓国ハンファとの練習試合で2番手としてマウンドに上がったのは、キャンプインから注目を浴びてきた松坂大輔投手だった。3年間故障に泣かされた右肩の状態を考慮し、キャンプインから100球を超える投げ込みは一切行わず、慎重に慎重を重ねて調整を続けてきた右腕が、ついに実戦の舞台に立った。 

 結果はすでに報じられているが、先頭打者を切れ味鋭いスライダーで空振り三振を奪うと、次打者は1ボール2ストライクと追い込み、外角低めへの真っ直ぐで見逃し三振。最後は内角への真っ直ぐで完全に詰まらせ、遊飛に打ち取った。1イニングを投げてパーフェクト投球。2つの三振を奪い、ストレートは最速143キロを記録したという。 

 松坂の現時点でのスタイルが発揮された投球だった。松坂といえば、150キロを超える豪速球で相手をねじ伏せる姿のイメージが強く、どうしてもその姿を投影してしまいがちだ。ただ、その松坂と、今の松坂は違う。右肘のトミー・ジョン手術を受け、右肩の大きな手術も受けた。そして37歳となった。

ハンファ戦の投球で想起した11か月前の登板

 150キロを超える真っ直ぐを投げることは、もしかしたら本人は究極そこを目指しているかもしれないが、難しいと言わざるを得ない。球速こそ落ちたが、真っ直ぐの質、そして手元で動かすボール、変化球、投球術といった経験と技術によって打者を打ち取っていくことが、右腕のスタイル。それは、今季からというわけではなく、日本球界に復帰した時からのスタイルだった。 

 そういえば……と、ハンファ戦のピッチングを見ていて思った。あの時もこんな感じだったな、と。 

 松坂の実戦登板は338日ぶりのことだった。思い出したのは、その338日前のこと。2017年3月25日にヤフオクドームで行われたオープン戦の広島戦だった。あの時、ヤフオクドームで松坂のピッチングを見た人は、確かに、復活への微かな光を見たはずだった。 

 その後のシーズンで圧倒的な攻撃力を誇った広島打線を7回まで無安打無失点に封じた。あとを受けた五十嵐、サファテもノーヒットリレーを続け、オープン戦で継投による無安打無得点試合を完成させた。この時も、140キロそこそこの真っ直ぐと、カットボール、シュートでの左右の揺さぶり、変わらぬ強烈な切れ味を誇るスライダー、そしてチェンジアップと、持ち球をフル活用して広島打線を手玉に取った。 

11か月前とハンファ戦の共通点、チームメイトも「違う球の重さ」

 この試合が終われば、オープン戦も残り1試合というタイミングだった。開幕が目前に迫っており、広島はほぼベストメンバー、開幕に向けて状態も仕上がってきている時期だけに、その投球内容は十分に評価されていいものだった。 

 並のチームなら、そのまま開幕ローテに入っておかしくないと思わせるだけの投球を見せた。ただ、そこは12球団屈指の選手層を誇るホークス。分厚い層に阻まれ、ローテから外れた。その後は知られた通り。シーズンに入って、また右肩に異変が出てしまったのは不運で、残念としか言いようがない。怪我は責められるものではない。何より辛いのは投げられない本人だった。ただ、確かにあの広島戦、松坂は復活の兆しを見せていた。 

 11か月前と、26日のハンファ戦。どちらの試合でも感じたのは球速以上に真っ直ぐが力強いことだ。140キロそこそこだが、打者が押し込まれたり、詰まらされたりするのは、ボールに力があるからなのだろう。キャンプ前に、キャッチボール相手を務めた又吉克樹が松坂のボールを「違う球の重さ」と語っていたが、それこそが、松坂の本当の武器。球速は失われてしまっても、ボール本来の質は失われていないということなのだろう。 

 まずは、きっちりと投げられることを証明して見せた松坂。ハンファ戦後のコメントを見る限り、本人は手応えを感じているようだ。ここからはナゴヤドームでの登板を重ねていく予定だという。怖いのは故障だけ。今後は開幕まで順調に仕上げていき、シーズンを投げ切ることが期待されている。それができれば、復活の白星だけでなく、2勝、5勝と、いくつもの勝ち星を挙げていくことも不可能ではないのではないか。 

(Full-Count編集部)

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