金属行人(3月1日付)

 「異次元」や「新たなステージ」など表現に違いはあれ、いま電炉メーカーが必死に訴えているのが来年度からのコスト高の厳しさだ。電極や耐火物、合金鉄など鉄スクラップ以外の資材価格が高騰。さらに輸送費の大幅上昇も加わり、到底、自助努力では吸収できないコスト高が確実となっている▼新年度まで、わずか1カ月。資材価格や輸送費の交渉は大詰めだが、耐火物などは調達難も浮上し「価格より生産への影響が心配」(購買担当)との声が聞かれる。輸送費に関してもドライバー不足は深刻で、特に重労働である鋼材輸送は人の確保難から価格交渉の余地が小さいという▼電極や耐火物の価格高騰は中国の環境対策、輸送費は日本の人手不足と、その原因は明らか。ただ、必死に電炉メーカーが説明しても「ユーザーの反応はいまひとつ」(販売担当)なのが実情とか。これまで主原料の鉄スクラップばかりが注目され、副資材や輸送費への理解が少なかったことが一因のようだ▼電極は現状比で3倍以上など、値上げ率の大きさを言ってもユーザーにはピンとこない面があるのだろう。「異次元」や「新たなステージ」とはトン当たりいくらのコスト高を指すのか。早期に新年度のコスト高を上げ幅で明示し、ユーザーの理解を求めていく必要があろう。

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