防空壕群「解体容認」「保存」交錯 新幹線建設現場 一部は既に切り崩し 長崎

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 九州新幹線長崎ルート建設現場の長崎市天神町で確認された防空壕(ごう)11カ所について、工事発注元の鉄道・運輸機構九州新幹線建設局は1日、既に4カ所を切り崩し、または埋め戻したことを明らかにした。長崎市が「保存する特段の理由がない」との見解を示したためだが、地元住民からは「新幹線のルート建設を考えれば解体は仕方ない」と容認論が聞かれる一方で、「一部でも残してほしい」と要望する声も上がっている。

 防空壕群が確認された天神町を含む銭座地区は長崎原爆の爆心地の南1・2~2キロに位置。73年前の原爆投下時は約2350人が暮らし、壕に避難した人もいたとみられる。

 工事現場は長崎ルートのトンネルの出入り口付近になる予定。同建設局によると、11カ所のうち8カ所はトンネルから延びる高架橋や再整備される市道などに重なり、残り3カ所の部分にはトンネルやレールなどの維持管理に必要な機材などを置くスペースを整備する。先月19日から1カ所を切り崩し、3カ所を埋め戻したという。

 この防空壕群を巡る地元住民の声はさまざま。付近をよく通るという70代女性は「防空壕があるなんて全然知らなかった」と驚いた様子。70代男性は銭座地区に壕が点在していることを踏まえ「他と比べて特別珍しいものでもない」と淡々と話す。90代男性は「保存となれば新幹線の工事が止まり各方面に影響が出る。(壕を)つぶすことになっても仕方ない」と言う。

 一方で保存を求める意見もある。この地域でまちづくりに取り組む西坂・銭座小学校区勤労者協議会は先月27日、長崎市議会議長に保存と活用を求めて陳情。開会中の定例会の教育厚生委員会で審査される。中村住代会長(71)は「まとまった形で確認された防空壕群は貴重。子どもの平和教育に生かすために保存する価値がある」と話す。

 銭座町の元小学校教諭、清水紀美子さん(84)は旧銭座国民学校6年の時に爆心地から1・6キロの銭座町2丁目(現銭座町)の自宅で被爆した。地区内の防空壕について「銭座の人たちが戦時中の空襲のたびに安全を求めて避難した『お家(うち)』のような場所」と述べ、「子どもに戦争や原爆を伝える教材になる。工事が進んでいるのは分かるが、一部でも保存してほしい」と願っている。

防空壕11カ所が確認された九州新幹線長崎ルートの建設現場。壕の埋め戻しや解体が進む=長崎市天神町