大同特殊鋼、EV走行距離増に貢献する高透磁軟磁性材を開発 センサ高感度・小型化に対応

 大同特殊鋼(社長・石黒武氏)は1日、EVやHVの走行距離増加や、使用者の安全向上につながる世界最高レベルの高透磁率を持つ軟磁性材2種(ニッケル合金)を開発した、と発表した。知多工場で生産し、すでにHV車種で採用が決まっている。同社では5年後をめどに年間10億円以上の売上げを目指す。

 開発したのは、透磁率を30万(世界最高水準)に高めた「MEMPC2―S」と、その材料に比べ磁束密度を約2倍(1・5テスラ)にし、透磁率を14万に高めた「MENPB―S」。

 MEMPC2―Sは、磁力に対して即座に磁化し、その後即座に磁気が抜けるという特性を持つ(高い透磁率)。電磁鋼板(透磁率5千)に比べて格段に磁力の抜けが早く、電流検出の不具合などを検出しやすくなる。そのため、結果的に使用者が充電する際の安全性向上などにつながる。

 従来の同社製品に比べ、透磁率は2割向上した。

 MENPB―2は、EVなどのバッテリー用大電流センサなどとして活用が見込まれる。具体的には、バッテリー残量の計測が今まで以上に正確になり、使用できる電池の容量範囲が広がる。この結果、EVの実走行距離の増加につながる。従来の同タイプ製品に比べ、透磁率は75%向上した。

 主にニッケル、その他の微量添加元素の成分バランスと製造プロセスの最適化により、高透磁率化が可能になった。

 製造可能形状は帯鋼で、可能寸法は板厚0・1~1・5ミリ、板幅は10~350ミリ。

 同合金を使えば、電磁鋼板のように積層して使用する必要がなくなり、センサの小型化にもつながる。

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